実力派芸人 C-1
Cは新宿のシティホテルで落ち着かない時間を過していた。
今夜、長年の夢と言って良いほどに焦がれていたロリータと一夜を過せるのだ。
Cは実力派のお笑い芸人、歳は32、芸歴は14年に、小学校の学芸会で爆笑を取ったのがきっかけで漠然とこの道を志してからなら20年を超える。
練りに練ったそのネタは完成度が高いと評価され、昨年開催されたピン芸人のコンテストでも決勝まで駒を進めたが、僅差で優勝を逃した。
Cは丁寧に作りこんだネタを極度の緊張の中でも淀みなく展開できる自信がつくまで繰り返し繰り返し稽古してようやくステージに上がれる、そんなタイプの芸人だ。
生来真面目で不器用、緊張もしやすい性格、リアクション芸は不得意だし、アドリブも利かず、一発ギャグも飛ばせないので本来バラエティ番組向きではない、しかし、彼の芸を高く評価しているお笑いの大御所・Bが自身の番組に出演させてくれている、その番組内で、ネタを披露する時の堂々とした態度とトークの時のしどろもどろ具合の落差が面白いと少し認知度が上がってきているのだが、芸人は『ぜひ出演してくれ』と言われる様になってナンボ、『出させてもらっている』程度ではあまりギャラは上がらない。
今のCにとって、さおりを部屋に呼ぶのに必要な対価は月収を軽く超える。
さおりを良く知るBはそんなCがロリコンである事を知っていたのだが、さおりと一夜
を過すための対価はCにとっては高価すぎると思っていた、しかし居酒屋での四方山話でCのロリータに対する愛情が憧れに近い熱を持っている事を知ったBは、費用を持ってやるつもりで紹介したのだ。
しかし、Cはそれくらいの貯金はあるから、と言って援助を断った。
それだけ真面目な男であり、本当にロリータを切望している証、さおりもその事を聞い
て意気に感じている。
合図のワン切りが鳴り、部屋の鍵を開ける時、Cの心臓は既に早鐘を打っていた、そして
部屋に滑り込んで来たさおりをひと目見るなりCは凍りついたようになってしまう。
さおりは部屋に潜入するのに目立たないように小学生らしいカジュアルな服装で客の元
へ現れることが多いのだが、今日は白いブラウスにチェックのミニスカート、共地のリボ
ンにハイソックス、と事前に大御所から聞いておいたCが理想とするいでたちだ。
幸い場所が新宿のシティホテルとあって、そのいでたちは親戚のお祝い事に出席した、と言う雰囲気で却って目立たないのだ。
「待った?」
普段なら『お待たせしました、今日はお呼びいただいてありがとうございます』と丁寧に挨拶をするのだが、今日のCに対しては『20歳年下の恋人』を演じ切るつもりだ。
「どうしたの?そんなにびっくりしたような顔をして・・・」
「え?・・・あ・・・ああ・・・いや、全然・・・」
Cはようやく我に帰って答えるが、声も上ずっている。
「・・・あたし・・・気に入らない?」
わざと少しふくれっ面をしてみせる。
「え?・・・いや、とんでもない・・・」
「ストライク?」
「・・・ど真ん中・・・1mmもずれてない・・・」
「嬉しい!」
いきなり抱きつくと、Cは腰砕けになり、重なって床に倒れこんでしまった。
「大丈夫?頭、打たなかった?」
「あ・・・ああ・・・大丈・・・」
その先の言葉はさおりの唇に遮られた・・・。
普段は早くても9時頃客の部屋に入ることが多い、しかし、今日はまだ4時半、どれだけ自分が熱望されているかを知ったさおりからの提案、少しでも長く一緒に過してあげたいと考えたのだ。
着衣のままベッドでCの腕に抱かれているとCはなにやらもじもじしている。
「あせらないで・・・チェックアウトは何時?」
「11時と聞いてるけど?」
「それならまだ18時間あるわ」
「その間ずっと?」
「ずっと・・・これ、脱がしちゃったら、もうあたし明日の11時まで何も着ないよ」
「でも・・・俺、もう辛抱し切れない」
「うん・・・だったら脱がせてくれる?」
ブラウスのボタンに手をかけたCの指先は震えていた・・・。
カーテン越しに朝日が差し込み、さおりは浅い眠りから醒めた。
Cはまだうとうとしている。
無理もない、さおりとCは、さおりがコンビニで仕入れてきたサンドイッチとドリンク
を口にしただけで、ずっと愛し合って来たのだ。
その間、Cは7度さおりの中で果てている。
最初はバスルームでさおりの唇に、それでも萎えることもなく対面座位でさおりの抱き
心地を堪能しながら二度目を、それからベッドに移って正常位、後背位で一度づつ。
再びバスルームで立ちバックで果てると、その興奮を保ったまま駅弁でもう一度。
そしてもう一度ベッドに戻り騎乗位で腰を振り続けたさおりが、さすがに疲れ果ててC
の腹の上につっぷすとCは優しくさおりの背中に腕を廻して言った。
「本当にありがとう・・・夢が叶ったよ、もう一滴も残ってないや・・・」
そして抱き合ったまま二人は夢の中に落ちて行ったのだった。