麗玩具-1
熊谷は桃香に関してはシネアートの看板監督である弘瀬や安達にさえその存在すら知らせていなかったが、秋麗からの報告を受け、主要なスタッフを集めて社内でのお披露目を催すことにした。
「実は半年前から桃香と言う娘を秋麗に預けてあったんだ、秘密兵器だよ、その桃香を見てもらってどう彼女を生かして、どう売り出すか考えてもらおうと思ってね」
席を連ねたのは弘瀬、安達はもちろん、それに続く監督数人、主要なカメラマンや音声と言ったスタッフ、マーケッティングで能力を発揮している吉岡も。
そこで生まれて初めて正式に人前に姿を現した桃香は、その場に居合わせた者全てに強い印象を残した。
桃香のデビュー作は写真、名前、経歴など全てを伏せたままで大々的にプロモーションされた。
ポスターもパッケージもエキゾチックな背景に細身で色白な妖精の様な少女のイラストでイメージだけを伝え、『麗玩具』という意味深なタイトルだけが踊る。
それでも業界最大手で質の高い作品をリリースし続けるシネアートが大々的にプロモーションするのだから、AVファンの間では期待が高まる一方だった。
デビュー作の相手役は大ベテランの篠崎が起用された、そしてAVとしては異例の製作発表の席にはメガホンを取る安達と相手役の篠崎だけ、自分は何も知らされていないと語る篠崎の困惑顔はそれが事実だろうと納得させた。