投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ひょうたん(魂を吸い込むツボ)
【SF 官能小説】

ひょうたん(魂を吸い込むツボ)の最初へ ひょうたん(魂を吸い込むツボ) 5 ひょうたん(魂を吸い込むツボ) 7 ひょうたん(魂を吸い込むツボ)の最後へ

戻された月岡-1

2〜3分後に資料室の奥の方で小さな叫び声が聞こえた「きゃ!」
僕は白々しく彼女に向かって
「どうしたの? 大丈夫?」と声をかけた。
しばらくしてから「大丈夫です。」と返事が帰ってきた。
どうやらバレていないようだ

更に10分ぐらいしたあと、僕の方に歩いて来る足音が聞こえた。
「あの〜〜」月岡さんが不安そうな顔をして立っている
「はい?」
「あの〜 変な事聞くようですが、私作業していましたでしょうか?」
「……? どういうこと?」
「いえ、作業はしてあるんですが、記憶がなくて、それになんか体も痛いし」
「それって、寝てたんじゃないの?」
「少し寝てたかもしれないです、それで、名前呼ばれた後から記憶が無いんですよ」
「名前? ああ、さっきのは強く言い過ぎました。すみません」
「いえいえ、そんな事ではないんです。 あの後は何を話ましたでしょうか?」
「え? 作業進行の確認です。その後、月岡さんはすぐに作業開始しましたよ」
「う〜〜ん 覚えが無いんですよ」
(覚えが無くて当然だ、これは完璧にバレていない……)思わず笑いそうになるのを抑えて、
「ところで、今はどのへんですか? ずっと寝ていたなら残業になる可能性がありますが」
「え! 作業は今ここまで進んでいます。」
差し出された紙には鉛筆で計算された数字が埋まっていた。
「あれ、ちゃんと出来てるじゃないですか」
「おかしいですよね、私の字なんですが、計算した覚えが無いんですよ」
(そりゃそーだ、その数字は去年の数字だからね、月岡さんの範囲は毎年変わらないんだよ。)
と思いながら
「計算が合っているか再度確認した方がいいよ。手伝いましょうか?」
と手を差し伸べると月岡さんは咄嗟に引っ込めて、
「あっ 大丈夫です。 自分で確認します」と言った。
たぶん、触れてほしくないんだな。
「残業になるなら手伝いますよ」
「たぶん、大丈夫です。 それに今日は残業出来ないんですよ」
「え そうなんだ、彼氏とデートかな?」
「いえ、営業の人たちに誘われて、断れなくて、
 でも残業になったら行かなくていいかもしれない」
言葉とは違って喜んでいない顔をしてる。
もしかして飲みに行くより僕と残業するのがいやなのだろうか?
「そうですか、僕の作業は結構早く進んでいます。無理なら言って下さい」
「……そうですか ご迷惑かけます」
「いえ」
キーンコーンカーンコーン!

「あれ、お昼だ。ランチはどうします?」誘ってみた。
「ゴメンなさい、お昼に食べる人が決まっているので……」断られた。
「そうですか、それでは午後、作業開始しましょう」
「はい、お疲れさまです」
資料室から出てエレベータに乗り社員食堂で別れた。
歩く後ろ姿をみると、どうやらバレずにすんだようだ。
「意外に鈍感かもね」
安心した。

安心したせいか、いつもどおり一人で食事してると、今度は逆に怒りが湧いてきた。

「食べる人なんて決めてないくせに、僕と食べるのがそんなに嫌かね。
 そのくせ営業のおっさん達と飲みにはいくんだな。
 今日1日作業なのにランチぐらい一緒にしてもいいだろ、
 残業したくないのも僕と同じ所に居たくないとか思ってるんだろうな
 今日の飲み会で僕の悪口で花咲かせるつもりだろ、
 2次会とかいって肩とか触られてセクハラまがいな事されるかもしれないぞ……」
ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ
僕は周りに聞こえないように独り言をつぶやきながら食事をしていた。

食事を終えて資料室に戻ると月岡さんは来ていない。
「作業が遅れているなら、昼休みを切り上げて仕事しろよ」
と近くの棚をけっとばした。

結局、月岡さんは1時ジャストに戻って来て作業し始める。
電卓の音が聞こえる。
Hした仲なのに、何もしゃべらないのは変だよな、
資料棚を月岡さんの背向かいの棚に移動する。
「あれ? もうここまで来たんですか?」来たら嫌なのか?
「いいや、でもこっちからの方が作業効率がいいだよ」
「え! そうなんですか」そうなんですか?じゃないよ!
「うん、それに息抜きにお話もしたいからね」
「へ? はぁ〜 そうですね」
もろテンションが下がっている声になった。

そんなに嫌がっても、午前中は3回もお前の中に入れたんだぞ、と言いたい
どうしよう、話が続かない。
しばらく二人の電卓を叩く音がこだましていた。


ひょうたん(魂を吸い込むツボ)の最初へ ひょうたん(魂を吸い込むツボ) 5 ひょうたん(魂を吸い込むツボ) 7 ひょうたん(魂を吸い込むツボ)の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前