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ひょうたん(魂を吸い込むツボ)
【SF 官能小説】

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西のひょうたん-1

僕は手に入れてしまった。
名前を呼んで返事をした物を吸い込んでしまうヒョウタンを
言い伝えでは門番の金閣、銀閣が持ちだした伝説の宝だ。
でも、このヒョウタンは少し違う、
返事をした人の魂だけを吸い込んでしまうらしい、
魂が無くなると人は人形と同じになる。
元に戻せば、その間の記憶が無いことが分かった。

朝ヒョウタンをカバンに押し込んで出勤した
今日は、待ちに待った半年に一度の資料整理の日だなのだ。
地下室にある資料の整理は地味で嫌がられてたけど、去年から一変して羨ましがられるようになった
なぜなら、月岡さんと二人っきりで作業できるからだ。
月岡さんはとても可愛いく、去年入社してすぐに人気が出て、
関係ない部署の人たちも彼女みたさに来る人が多くなったほどだ
そんな人気の彼女と1日いっしょなのだ、
彼女自身は嫌そうだけど、部内で手が空いている者は僕たちだけだから仕方が無い。
そしてデブオタの僕が後輩の彼女と自然に会話ができる唯一の日だった。
さらにヒョウタンを使えば月岡さんに触ることができるんだ。

会社の席につくと、上長に二人とも呼ばれ資料整理を頼まれた。
僕達は分厚いリストを片手に資料室に向かう。
「半分おねがいします やりかたは……」歩きながらリストを渡すと
月岡さんはムッとした顔になり口に手を当てた。
「わかります、私は1の棚からやればいいんですね」と言う。
僕が話しかけるといつもそうだ
口臭なのか、話しかけると手で口をおおってしまう。
「そうです。僕は最後から始めるから、今日はよろしくお願いします」
「はい、こちらこそ」
手を口に当てたまま、そっけない返事で1の棚に向かって行った。
その後ろ姿は、
細身の紺色スーツが背筋からお尻にかけて絶妙なカーブを描いていて、良い体だ。
人生、生きてきた中で一番カワイイと断言できる。
人気あるとはいえ地下の資料室にまで来る人はいない、今日は、邪魔する者はいない。
とは言うものの、一緒に仕事するわけではないから話をする機会は意外に少ないのだ、
少ないが、ゼロではない。
返事さえすればいいのだから。

さっそく隠しておいたカバンからヒョウタンを取り出し栓を抜き、呪文をとなえた。
準備完了だ。
そして棚の奥で電卓を打っている月岡さんの所まで忍び寄ると、
ヒョウタンの口を彼女に向ける。
これで返事をすれば彼女が人形になるんだ。
手が震え、心臓が飛びだしそうだよ。
でも奥手な僕だけど、
この一瞬だけ勇気を出せば、この紺色のスーツ着た彼女を触ることができる。
よし、僕は意を決して彼女の名前を呼んだ
「月岡由紀奈!」
「きゃ!」電卓を落として振り向く月岡さんは、
「びっくりした。 どうしたんですか?」
すぐに怪訝な顔になり僕を見ている。
(失敗だ〜!!
 なんで返事しないんだ。
 普通、名前呼ばれたら返事するだろ
 どうしよう、
 予想外だった。)
「それ、何ですか? ツボ?」
月岡さんは僕の持ってるヒョウタンを覗き込む
「あ……ああ、これはいいんだ。
 そ、それより名前呼ばれたら返事するものだろう? なんで返事しないんだ?」
「へ? すみません。
 じゃぁ〜はい、なんでしょうか?」
ニコッ天使の笑顔
「いいいいいまじゃない 呼ばれた時に返事するものだよよよ
 しゃしゃしゃかいじんとして常識だろ」
興奮してろれつが回らない。
「……どうしたんですか? 今日は変ですよ」
月岡さん手を口に当てて少し困った顔をする。
「そそそれだよ。なんで僕と、話す時だけ手を当てるんだ! ぼぼぼぼくは嫌なんだよ」
「は! すみません。気をつけます」手をおろした。
「もももういちどするから、返事をするんだぞ」
「……わかりました」
不服そうな顔も可愛い。
月岡さんに見られない様に後ろを向いてヒョウタンの栓を閉じ、
素早く栓を開け、念仏唱えた。
「なに? してるのですか?」
覗きこむ月岡さんから隠し向き直る、
「いいから、いくよ……返事ぐらいしろよ」
「わけわかんないよ」と小声で反論
僕は聞こえてない振りしてヒョウタンの口を月岡さんに向けて、もう一度名前を呼んだ、
「”月岡由紀奈!”」
顔から火がでそうなほど恥しい。
「……
 ……
 ……
 ……」
長い沈黙。
(ええ!返事が無い。
なんで返事しないんだ。
今、言ったじゃないか。
自分でもわかりましたって言ったよな。)
彼女はヒョウタンを凝視している
大量の汗が吹き出てくる。
(どうしよう。
もう一度最初から試そうか。
でもかなり無理があるぞ やばいいいいい)
やがて、
不信そうにヒョウタンを見ていた月岡さんは、諦めたのか
「……………はい、なんでしょうか?」
返事をした。

途端、言葉の後の方がかすれて聞こえなくなると
手に持っているヒョウタンがブルッと震える。
……
……
……
しばらく動かずに立ち尽くしていた僕は
持っているヒョウタンに顔を近づけて覗き込むと、
中に小さく棒の様になった月岡由紀奈が浮いているのを確認すると、
そっと栓をした。
キュ
「……できた」
ヒョウタンを持つ手が震えている。


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