ちびま○子ちゃん-6
(6)
こうして真美子が戸惑ううちに話の流れは加速していった。
(迷う……)
ためらいは、健一が気に入らないのではない。初対面の時から好感を抱き、いまでははっきりと好きだと思う。布団の中で秘部に沈む指先には彼が宿っていた。
迷いは真美子の気持ちの問題だった。
(あたしなんかでいいのかしら……)
結婚すればいずれ女将さんの跡を継ぐことになる。自分のような経歴の女には分不相応ではないか。同業者の娘さんをもらった方がいいのではないか。
生い立ちから今日までの変遷にずっと引け目を抱いて生きてきた。
真美子の逡巡はそこにあった。だが蔵王閣での2日間で真美子の澱んだ想いは清流に乗って消え去った。
「いらっしゃいませ」
チェックインの時、フロントで対応したのは健一である。顔を見合わせて真美子は不意に目頭が熱くなった。
(会いたかった……)
知らずうちに想いが積っていたことを知った。
(こんな気持ち、初めて……)
突然募る気持ちが胸に突き上げてきたのは過去に経験のないことであった。
案内された部屋で真美子はしばらく頭の中が空白になっていた。そして動き始めた思考を辿りながら体の奥の疼きに身をよじらせて溜息を洩らした。
健一の言葉が囁くように耳に残って繰り返される。
「10時には終わる。部屋に行っていい?」
真美子は彼の目を見ずに頷いた。
部屋は8畳の和室と寝室があり、檜造りの露天風呂がついている。小じんまりとしているが、高級感あふれる部屋である。寝室は洋風でベッドはツイン。健一の言葉が甦り、真美子は心を乱したのだった。
(女将さんの設定したものだ……)
真美子は確信し、心の被いをすべて脱ぎ去って健一を迎えた。
夜遅く部屋に現われた健一はいきなり正座をして、
「真美子さん、結婚してください」
そう言って頭を下げた。真美子は言葉が出ない。顔を上げた健一に、真美子は顔を横に振った。
「だめですか?」
感激した咄嗟のことで、それを否定するためにまた横に振って、
「あなたを大切にします。旅館も跡を継ぎます」
(ちがうのよ)
言葉が喉につかえて、真美子は四つん這いになって健一に縋って抱きついた。
混乱と快感と歓喜。……健一と初めて結ばれた状況を真美子はよく憶えていない。夢中で口付けをして浴衣を脱がされて朦朧とする中で貫かれた閃く体感だけが残っていた。セックスの実感が体を這い回ったのはその後である。
気が付くと健一の胸の中にいた。じっと真美子を見つめていたみたいだった。
「恥ずかしい……」
「可愛い……すてきだったよ」
「若旦那さん……」
「そんな言い方しないで」
「だって……」
健一を見上げて目を瞬かせた。
(甘えたい……)
そんな気持ちになって、
「なんて呼んだらいいかわからない……」
女って弱い……男って逞しい……。
過去の体験は自分の意思を伴っていなかった一方的な行為であった。初めて身を任せた健一の胸に抱かれ、拠り所を感じたのである。
「健一、でいいよ」
「そんな……」
「2人きりの時はそれでいいよ、ね?」
「はい……」
「真美ちゃんって呼んでいい?」
「真美ちゃん、ですか?」
「だめ?」
「……いいですけど……」
健一は子供のように満面の笑みを浮かべた。身長180センチの大男が真美子の胸に赤ちゃんみたいに吸いついてきた。
「真美ちゃん……」
「ああ……」
乳首から生まれた快感が下腹部に伝導していく。
(健一……)
口には出せず、心で呼びながら彼の頭を抱えた。
絶頂、というものを真美子は初体験した。快感がどうにもならないくらい膨らんで胎内をえぐる健一のペニスによって破裂させられた衝撃だった。
「あううう!」
電流が走ったみたいに痙攣が起こり、その後は力が抜けて意識が遠のいた。
ふわりと浮いた。
いつの間にか健一に抱えられて露天の湯船に浸かっていた。お姫様だっこですっぽり包まれている。
「真美ちゃん」
彼の首に腕を回して真美子の方から唇を求めた。2度、望まぬ形で秘唇を割られたが、キスをするのは健一が初めてである。技巧も何もない。押しつけていると健一の舌が入ってきて、
「うぐ……」
応じることが出来ずに受けていると、舌先が触れ合い、
(あ、健一……)
いつの間にか舌を絡め合っていた。
心を許して結ばれた体の繋がりは相手と溶け合った気がする。幸福感に満たされる。真美子のとって初めての感情だが、
(女って、こういうものなのかも……)
そう思った。
一つになったから、自然と言葉遣いも敬語がなくなって、それは意識せずに変わっていた。
静かな夜。掛け流しの湯音だけが絶え間なく聴こえている。
「ね、」
「ん?」
唇を外して、真美子は体勢を変えて健一の股間に跨った。向き合った座位の形だが、真美子は深い知識もなく聞きたいことがあったのでその格好になったのである。
(あ……)
秘毛を掃いて下腹部に触れたのはペニス。その硬さから勃起しているのはわかった。二人の下腹に挟まれた形である。大胆になり、ぐっと押しつけて、顔を寄せた。
「あたしがチビだからいいの?」
「それだけじゃないよ。可愛いからだよ」
「小さいからから?」
「小さいって、可愛いだろう?子犬だって子猫だって」
「あたしは犬や猫と同じなの?」
「ちがうよ。たとえだよ。それは、ぼくは小柄な女の子が好みだけど、ただ小さければいいわけじゃない。真美子は全部がいいんだ」
(ふふ……)
健一に頬擦りをして腰を上げ、ゆっくり下すと、
「ああ」
先端が秘口に食い込んだ。