〈嗅ぎ付けた獣達〉-12
――――――――――――
『どうでした?いい女だったでしょう?』
ミニバンを運転している若い男は、後部席で興奮覚めやらぬ男達に声を掛けた。
『いやあ、もう最高でしたよぉ』
『あのモチモチした身体……ありゃ男に抱かれる為に生まれてきた女ですよ』
恭子の苦悩すら知らぬ男達は、他人の妻を奪い、そしてその肉体が極上品であった事に、満足しているようだ。
『分かってると思いますが、勝手なコトはしないで下さいよ?必ず、俺達を通して……必ずですよ?』
『……も、勿論です……』
まるで恭子が自分達の所有物でもあるかのように、若い男は凄んだ。
恭子は既に耕二の妻ではなく、ましてや彩矢の母親でもない。
降り掛かる火の粉に必死に耐えている健気な想いは、もはや無意味なものへと成り下がっていたのだ……。