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〈熟肉の汁〉
【鬼畜 官能小説】

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〈霧散した未来〉-10



…………数週間後。




『お〜い、早いトコ金を払ってくれませんかあ?』

『そこに居るんだろ?こっちは昨日から見張ってんだよぉ』


今日も朝から柄の悪い男達がアパートに押し掛けていた。
もう日常化している隣の部屋の住人への金の取立て屋の怒号を、生気の失せた耕二と笑顔の消えた彩矢は、気にも留めずに素通りした。


あの日の翌日、耕二は恭子のクローゼットの中から[恭子のだらしない肉体]と書かれたDVDと、異臭を放つ使用済みのディルド、そしてビニール袋に入れられた数個の茹で卵を見つけていた。


………結局、耕二はDVDの中身を確認しないままだった。
パッケージから察しても、きっと正視出来ない代物なのは間違いないだろうし、もうこれ以上、苦しみたくはなかったというのが本音だった。



『返す気ないんですかあ?貴方が“レンタル”した部屋代なんですけどぉ?』

『俺達の方の家賃は滞納してもいいとか思ってんのか?お前は一般常識も無いのかよぉ!』


誰も“未来”を掴まなかった。

誰も幸福など得ず、這い出せぬ漆黒の泥沼に嵌まり、陰鬱な心を抱えて生きている。


恭子は戻らない。
細やかな家庭の温もりも、今や氷のように冷えきったままだ。


『ママ……今日は帰ってきてくれるかな…?』


彩矢の幼い胸の痛みは、生涯に渡って癒えないだろう。
何故ならば、人の痛みすら知らない住人達の世界に、恭子は囚われているのだから……。




《完》


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