無謀な逃走-1
口の中に残るザーメンの青臭さを堪えながら小暮小夜子は再び哀願する。
「さぁ、先生 約束です、淳之助君だけはお部屋に返してあげて 今夜のことは絶対口外しないよう言い聞かせますから…」
だが残酷な拷問者は、清楚な令嬢と、純情な少年を穢し合わせることに異常な快楽を覚えはじめていた。
「ふふふ、フェラチオ位の事で筆おろしにはなるまい? なかなか導き上手だったではないか、小夜子嬢? この純情で愛らしい少年を君が辱めていく様をもう少し愉しませていただくよ」
曽根蔵はいまだペニスをヒクつかせその亀頭から精液の残り汁を滴らせながら項垂れる淳之助と、亀甲縛りにされたままの全裸の令嬢を見比べて嗤う。
「ひ、人でなし…」
生まれてこの方、人を罵ったことのない小夜子の精一杯の抗弁だった。
小夜子と淳之助2人をいかにいたぶるかを思案する曽根蔵だったが、当の捕虜の片割れが意外なことを言い出した。
「お、お願いです… 御手洗いに行かせて」
いまだ憧れの美女からの筆おろしに放心状態の淳之助が項垂れながらつぶやいた。性感が昂ぶっている間は尿道が圧迫され出るものも出なかったはずだが、欲望のマグマを噴出した今では尿意をより敏感に感じるのだろう。
「いいだろう さすがに小僧のお漏らしは見たくなのでね」
曽根蔵はまたもほくそ笑みながら承諾した。
少年の生理現象すら、残酷かつ隠微な拷問者は道具に使った。邸内のトイレに行くことを認めた曽根蔵だったが、またも条件を詰めた。そう、それは全裸の小夜子の同伴だった。小夜子の亀甲縛りは解かれている。だが、代わりに淳之助は後ろ手に緊縛を受けていた。しかもブリーフは履かされたままだ。小夜子に放尿までの下準備をさせようというのだ。
「歩ける?、淳之助君」
優しくいたわるように彼の肩を抱き留める小夜子。
「う、うん、大丈夫…」
縛られているため、不安定な身体を支えるべく、温かい小夜子の肌が背中や二の腕に触れる。だがそのたびに、少年の性感は再び昂ぶらされる結果となる。洋館の廊下を裸足の2人がひたひたと絨毯を踏みしめる。やがてトイレにたどり着いた。
「さ、淳之助君ごめんね…」
小夜子は気恥ずかしそうな声とともに、微かにためらう手つきで淳之助のブリーフの放尿口から性器を取り出す。
(い、いやだ! また小夜子さんにオチ●チンを触られるなんて!)
だが小夜子は少年の生理的欲求を満たすのが先と、甲斐甲斐しくまだ性液にぬるりと塗れた淳之助のペニスを取り出し便器に向けさせる。小夜子の程よいサイズのバストの温もりを背中に感じた淳之助。
「出せる・・・おしっこ?」
まるで幼児を教え導くようなお姉様の口調に、再びペニスが屹立する純情少年だ。ヌルヌルの包皮をそっと引っ張られるだけでもう気絶しそうな快感と死にたくなるような気恥しさを同時に味わう淳之助。小夜子に性器を弄ばれる心地良さを堪能したい一方で、早く放尿を済ませて猛り勃った性器を小夜子に見つめられる屈辱刑から解放されたいという気持ちが入り混じる。だが放尿を促す心優しきお姉様の柔らかな手つきに完全に勃起した12歳の性器は厚く硬くさらなる膨張を続ける。尿道を圧迫され、出るものも出ない状況だ。気まずい沈黙が2人に流れる。根気よく尿意を待ち続ける小夜子の美貌が淳之助の右肩にそっと寄り添う。
「ご、ごめんなさい、小夜子さん… 膨らんじゃって…出ないや」
羞恥心を堪えながらつぶやく淳之助。
「いいのよ、仕方ないわ…男の子だものね」
小夜子のすべてを理解したような包容力のある口調に安らぎも覚える淳之助。
「大丈夫、ちゃんと淳之助君が大人になっている証拠よ」
囚われの身にあっても、年下の少年を励ますように微かにユーモアを交えたチャーもングな物言いも彼女の芯の強さを物語っている。
ややあって、ようやく緊張の糸が解けた淳之助の小水が便器に向けて弧を描き始めたその時、小夜子が囁くように言った。
「聞いて淳之助君! お姉さんと一緒に逃げるわよ!」
闇夜を走る全裸の美人令嬢と、裸同然の少年。
「さ、淳之助くん急いで!」
カモシカのような細い美脚を蹴り上げ、淳之助の手を引き、避暑地の夜道を逃走する若い2人。だが、その無謀な脱走が用意周到な権力者を相手に成功するはずもなかった。
「この小道を抜ければ、車道に出るはず! そこで助けを求めれば…」
銘家の令嬢が全裸で助けを求めるスキャンダラスなリスクにも動じず、小夜子は淳之助を救う道を選んだのだ。
「小夜子さん、明かりが見えてきたよ」
路上を照らす外灯が2人には天の助けにも見えた。道路に出るとタイミングよく、一台の車が緑豊かな道路をまばゆいヘッドライトで切り裂きながら近づいてきた。声を限りに叫んで助けを求める2人。車が停車する。
「襲われたんです!! 助けてください!!」
淳之助は運転席に駆け寄って援助を求める。小夜子もそれに倣おうと、乳房を隠しながら駆け寄った。
だがその美貌が強張った。それが拷問者の使いであることを悟ったためだ。サングラス顔の運転手は言う。
「ならば、安全なところまでお送りしましょう 曽根蔵邸に、ね」
言うが早いか、男はスタンガンを取り出すと淳之助、そして小夜子に火花の散る電撃を加えるのだった。