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爛れる月面
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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3.広がる沙漠-16

 ドサリと枕の上に落とされ、手首を掴まれて、脚を開いて膝を付いた狭間に差し込まれる。自分の指に触れるクリトリスはヌメリの中で鋭敏に打ち震えていた。井上が手首を離しても紅美子は直後でピストンされる男茎に呼応させて指を動かしていた。
「自分でしたろ? 僕を待ってる間、そうやって」
「するわけないっ……」
(また、イク……!)
 クリトリスに刺激を与えて間もないのに、紅美子はまた絶頂していた。果てて溶け落ちような錯覚が訪れるほど敏感になっているのに、指は波が引かないようにずっとクリトリスをイジり続けている。
「してない? この前教えた時よりイジリ方がイヤラしくなってる」
「……そう、ウソ。したよ、何回も。……徹に触ってもらうの、想像してしたっ……。毎日……。明日、してもらうの想像して待ってたっ……! 毎日、したっ……あ、あんたじゃないっ」
 絶頂の余韻の中、紅美子は悲痛に叫んだ。
「徹くんに嫉妬しなければ、僕は愛せない……、っ……、くっ……」
 背後から井上の歯を食いしばる声が聞こえると、連続した強い打突が見舞われてきた。体が陵辱の熱い体液を受けたくて待ち望んでいる。紅美子は蜜に濡れた手をクリトリスから離し、両手をシーツについて背を思い切り反らせ、ヒップを井上に向けた。
 井上が大きな声を上げて、脳天まで突き抜ける衝撃を与えると、締め上げる体の中で男茎が暴れ回り、紅美子の期待していた通りの、熱い奔出を爆発させた。
「うああっ!!」
 意図しなくても内壁が男茎を全てを吸い取るがごとく搾り上げる。
(まだ、来る……。もっと……、来る)
 休憩を挟まず、そして一向に萎えないでいる男茎が再びピストンを開始すると、紅美子は膝を使って体を前後させ、より深く貫かれるように下肢を揺すった。


 東名川崎の前で発生した事故は玉突きだったせいで広く車線を塞ぎ、長い渋滞を作った。それをやっと抜けたかと思うと、今度は渋谷線で事故が発生して徐行となった。
「もう、間に合わない」
 コンソールの時計を見た。コンパクトの小さな鏡へ視線を戻してグロスを唇に滑らせながら言ったため、奇妙な声になった。
「……間に合うさ」
「無理しなくていい」
「間に合う」
 井上は前方で「事故」と表示された電光掲示板を高く掲げている警察車両を顎で指して、「アレを抜ければ飛ばせる。十一時前には浅草につける」
 パチン、と音を立ててメイク道具をバッグにしまうと、代わってお気に入りのブランドの香水の小瓶を取り出し、手首につける。
「……だが、悪いけど、君が家に寄る時間は無くなった」
「わかってるし。だから今こうして化粧直してたんじゃん」
 身をかがめてパンプスを脱ぎ、膝とくるぶしにも振る。「昨日と同じ服でクサかったら最悪。汚いし」
「下着も汚したしな」
 運転席から笑い声が聞こえて舌打ちをした。少し迷った後、少量を手にとってバルーンスカートの中に手を入れて内ももにも振る。
「ったく、誰のせいよ?」
「下着?」
「下着はあんたのせいなのは間違いない。遅れたこと」
「それも君のせいだ」
 露天風呂から出て、布団を雫で湿らせながら始めたセックスは朝方までずっと続いた。紅美子は何度絶頂を味わったか憶えていない。井上が、これも何度目か分からない放出を終え、紅美子を抱きしめてくると腕の中で少しまどろんだ。気がついたら空が白み始めていた。
「オッサンがバカみたいにヤリまくったからね」
「だから、君のせいだ。……二十年、いや、二十五年ぶりだよ。あんなにもしたのは」
「若かりし頃の精力が戻ってよかったね」
 紅美子は香水をバッグにしまうと、パンプスを脱いだまま脚を伸ばし、シートに深く身を横たえた。「……寝不足でも、事故るなら私をちゃんと届けてから事故ってね」
「大丈夫。昨日は飛行機の中でずっと寝てた」
「だから、そんなに元気だったんだ。私は昨日ずっと、普通に働いてたんだから眠い」
 そう言って紅美子は目を閉じた。「誰かが寝かせてくれなかったし。せっかくあんな高いとこ泊まったのに」
 事故現場を抜けると前の車がスピードを上げ始めたので井上はアクセルを踏んだ。加速で体がシートに心地よく押し付けられる。
「そんで今日も寝れない。きっと徹が寝かせてくれないもんね」
 と言って、首だけを曲げヘッドレストの凹みに横顔を沿わせて井上の方を見る。「寝ていい? 浅草ついたら起こして」
「……神楽坂に連れてかれる、なんて思わないのか?」
「そうしたかったらそうすれば? きっと徹が死にものぐるいで見つけるよ。……二十年一緒にいるんだもん。超能力が働くよ。そんで……、あんたは徹に殺されるの。切り刻まれて……」


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