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LADY GUN
【推理 推理小説】

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さよなら大好きな人…-7

 空が明るさを得て星が一つずつ消えていくそんな時、所長が若菜の横に立った。
 「お母さんが…亡くなられたそうです。」
若菜は予感していたのかも知れない。一瞬目を閉じた後、小さな声で言った。
 「そうですか…。」
若菜は空を見つめていた。
 「あなたは特例で自分だけ刑務所を抜け出す訳にはいかないと言ったそうですね。あなたの仲間を思う気持ちはきっとお母さんに伝わった事でしょう。お母さんは最後まであなたの名前を口にしていたそうです。息を引き取る間際、私の娘として産まれてきてくれてありがとう、そう笑顔で言って天国へ向かわれたそうです。」
 「…」
若菜の中で何かが崩れさった。感情が抑えきれなくなる。心臓が軋む。心が壊れそうだった。
 「お母さん!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!うわぁぁん!!」
所長に抱きつき人目も憚らず泣きじゃくる若菜。背中を擦りながらそんな若菜を所長は優しく介抱した。
 どんな時も自分の味方になってくれた。不在がちな父の代わりに自分の行きたい所に連れて行ってくれた。決して父を悪く言わなかった。つらくて刑事を辞めようと思った自分を叱ってくれた。そして最後まで自分を信じてくれた母。そんな麗子への思いは涙などでは語り尽くせるはずもない。若菜の頭の中は母親の愛情でいっぱいだった。若菜の哀しみに溢れた鳴き声は所内に響き渡っていた。
 受刑者達は寝ずにずっと祈りを捧げていた。若菜の泣き声に一緒になり涙を流していた。いつまでもひびく若菜の哀しみ。所長はずっと若菜の体と哀しみを支えていたのであった。
 やがて朝日が昇る。若菜は涙を拭い所長に言った。
 「パンジーの種はありますか…?」
と。その意味を何となく理解した所長は事務所に戻り種を持って来た。
 「お母様はパンジーが好きだったの?」
 「はい…。」
若菜は一粒だけの種を何も植えられていない花壇に埋めた。そして跪き手を合わせる。
 「お母さん…、私はまだまだ一人では生きて行けません。だから私の事を見守ってて下さい…。」
そう願いを込めた。春には咲くだろう。若菜が埋めた種が綺麗な花を咲かせるだろう。
 花が咲く頃、若菜は驚く事になるだろう。
若菜が埋めたパンジーのまわりに、まるで暖かく見守るように沢山の花が咲いている光景に。そして驚く若菜が振り返ると沢山の仲間が暖かい笑顔で若菜を見つめている事に気づくであろう。春はもうそこまで来ている。


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