運命の銃弾-4
すると南側の窓の外に人影が見えた。誰が外から愛理と田口を狙撃したようだ。
(だ、誰?)
警戒する若菜。しかし中に入ってくる様子はない。
「くっそ!!」
脚から血を流しながら若菜の首を手で絞めてくる田口に若菜は振り払う。
「くっ…!」
立ち上がろうとするが撃たれた脚に力が入らない。激痛に耐え脚を抑えながら何とか立ち上がる若菜の足を掴み引っ張る田口。
「きゃっ!」
再び床に倒れた。地面を這うようにして襲いかかる田口に若菜も応戦する。防御なしの攻め合いだ。
「お前の仕業か!?愛理を殺したのは!?」
「知らないわよ!!」
「嘘つけ!湯島さんも麻耶さんも高田家のみんなも愛理もお前の仕業だろ!!」
「だったらどうするのよ?」
「警察は汚いねぇ!自分らの悪事は何が何でも揉み消し都合のいい事実を作り上げ世間を欺くくせによー!どうせお前も美化されるんだろうが!!」
「はっ?何の事よ!?」
「何でもいい!この野郎、許さねぇ!」
「そんなのこっちの台詞よ!」
もつれ合う2人。敵同士だが、大切な人間を奪われた憎しみを抱く者という点では共通していた。どちらも正義であり、そして悪なのだ。言い換えれば似た者同士なのかもしれない。お互いの拳にそれぞれの想いを込めて復讐を貫いていた。
そんな中、山小屋から離れ暗闇を逃げる二つの人影があった。
「何でわざわざ自分の危険を犯してまでまたここに…」
「彼女は私達の苦しみも背負ってあいつと戦ってくれてるのよ?あんなザコキャラに殺されてたまるもんですか!」
「だったら田口も殺せば良かったじゃん。」
「馬鹿ね!私が田口を殺してどうするのよ?それこそあの子に恨まれるわ。」
「そりゃそうだ。でもせっかくうまく逃げられたのになぁ。また何事もなく出国できればいいけど…。」
「ダメならダメで構わないわ。」
「また〜。」
「フフフ。あの子の復讐を邪魔する奴は許さない。私は人生をかけてでもあの子の夢を叶えたかったの。田口に勝つあの子の姿は私が為しえなかった私の希望でもあるからね。」
「大事な後輩の為か。てか上原若菜って人間に惚れたんでしょ?」
その女性はニコッとして言った。
「かもね。」
道なき道を走って逃げる2人はそんな会話をしながら走って逃走していた。その2人は一体誰なのであろうか。誰も分からなかった。
二人は無事空の便で出国し、窓から見える雄大な雪山連山を見つめていた。
「さよなら。いつかまた会いましょうね。」
そう呟いた。