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LADY GUN
【推理 推理小説】

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時を超えて-1

 「結局呼ばれたか…」
若菜は田口を引きずり出すつもりであったが最終的に呼び出されたような形となり少し悔しさを感じた。いよいよ白山の麓まで来た。静香を失って以来、何度か訪れた白山。山道に入って行く若菜だが、この道を通るといつもあの時の事を思い出す。
 ハンドルを握る手が落ち着かないのは武者震いなどではない。田口が怖いのだ。自分が強くなれば強くなる程に田口の力が怖くなって行った。何度田口に犯される夢を見ただろう。田口を恐れる自分が嫌になる。
 しかし日本の警察の中で田口に適いそうな人間は若菜だ。それほどの力を持っている事を自分では気付いていない。それは田口自身も認めている事だ。若菜も田口だって自分を恐れていると気付いていた。それは杏奈を人質にとった事でそう思った。自分を格下だと思っていたなら人質など必要ないからだ。プライドを投げ捨てて自分に加藤としている田口の心理を読んだ。
 「負けない…私は負けない。」
落ち着かない手でハンドルをギュッと握り締める。見つめるフロントガラスに様々な思いが映る。父親を亡くして棺の前から離れる事が出来なかった自分。刑事になる事を誓った自分。未熟な自分を引き連れ色んな勉強をしてくれた静香、ずっと背中を追っていた。刑事として、女性としてずっと憧れていた。今でもそうだ。何から何までずっと静香の背中を追っている。約束したカフェに行けなかった後悔が胸を締め付ける。そして自分を庇い腕の中で息絶えて行った静香の姿。失意の中から這い上がり必死で今まで生きてきた自分の姿…。まるで映画を見ているかのように若菜はフロントガラスに映る記憶を見つめていた。
 「いえ、いくら頑張っても先輩の真似を出来なかった事が一つだけある。だから先輩を憧れただなんて決して言ってはいけない。」
それは正義、だ。若菜は復讐の為だけに刑事をしている。世のため人のためではない。田口を逮捕する…違う。若菜は田口を殺す以外の目的は持ち合わせていないのだ。静香の最後の瞬間、憎しみで銃を握るなと言われた。大切な先輩や父親の教えを若菜は守れそうにもない…、いや、守るつもりはない。
 「お父さん、先輩、ごめんなさい。私はもう刑事としての魂は捨ててしまいました。私は田口と同じ。魂を悪魔に売った犯罪者です。私はもはや刑事ではありません。お父さん、先輩…、私は地獄への道を選びました。私は田口を殺す…!」
涙を拭いとった若菜の目の前に因縁のあの山小屋が姿を現したのであった。


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