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透明な滴の物語V
【同性愛♀ 官能小説】

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ワインのあとで-1

第6話(最終話) ワインのあとで

聡美のクルマが佐和子のマンションに着いた頃には、雨と風はますます激しくなっていた。
「聡美。ウチで食べていきなよ。大してご馳走はできないけど」
旦那が出張で居ない気安さから佐和子が誘った。
「いいの?そうしようかしら」
一方の聡美も佐和子とせっかく会った佐和子と少しでも多く一緒に過ごしたかった。

聡美もなにかと手伝い、女3人で食事をした。
娘の琴音も、母親のお友だちの登場で興奮したのか、元気を回復した様子だった。

しかし、外の天気は回復するどころか、嵐の様相を呈してきた。
「あーあ、私、帰りたくないなぁ」
外の様子を見ながら聡美がつぶやいた。
「聡美。泊まっていきなよ」
「いいの?」
「クルマで来ているんだから、明日ここから出勤すればいいじゃない。あとでワインでも飲もうよ。良いのが冷えているの」
出張から帰宅したら飲む予定で旦那が冷やしていったワインがあった。
「旦那さまのワインなんて、飲んじゃってもいいの?」
「もちろんよ!琴音を寝かしつけたら、あとで楽しもう」
こうして、上等のワインは女同士の再会のイベントに横取りされることになった。

先にバスルームを使わせてもらったのだが、聡美は通りすがりに、寝室で琴音を寝かしつける佐和子を見た。
母親は横になり、娘のおなかの辺りにポンポンと手をのせたり、撫でたりしている。
そして、暗記しているらしい絵本のセリフを語りかけている。
娘も、ところどころ覚えている箇所を母親に合わせて口に出している。
母と娘は目を見つめ合い、表情は和やかだった。

聡美は、心の奥底から抑えがたいマグマが噴出してくるのを感じた。
嫉妬心のようでもあったが、そこには悲しみが含まれていた。
聡美は、その感情を押し殺し、バスルームへと向かった。

その後、佐和子と聡美のワインの宴は盛り上がり、旦那に残されたワインはわずかになってしまった。



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