同じ穴のムジナ-2
やがて中島の部下、工藤が運転する車が到着する。中に乗り込む若菜達。若菜と涼子は後部座席へ座る。車を走らせる工藤。
「で、どこに行きますか?」
若菜は迷わず答える。
「白山に行って。山頂付近に倉庫があるからそこに。」
「かしこまり〜!」
工藤はナビをセットして運転する。
「あなた…何する気なの?」
涼子が訪ねた。
「到着したら話すわ。それよりお金どこかに隠してるわよね?」
「えっ…?」
「麻薬の売上金、まだ田口に納めてないわよね?てか納めるつもりももう田口に会うつもりもないわよね?」
矢継ぎ早に涼子の考えている事を的確に言い当てる若菜。
「流石ね。ホント優秀なのね、上原さんは。」
恐れ入ったという仕草を見せる。
「あなただって優秀だったはずです、瀬川さん。」
ここに来てようやく敬称づけで名前を呼び合ったのはお互いを敵ではないと認め合った証拠かもしれない。
「それはいいとして、いくら隠してるの?私の読みでは1億はあると思うけど?」
「いい読みね。そこまではないけど、それ近くはあるわ。」
物凄い話に中島と工藤は唾をゴクリと飲み込んだ。
「二千万、くれません?」
軽く言う若菜。
「な、何なの、いきなり…」
「色々必要なの。殺人の口止め料よ。」
「脅す気?」
「うん。口止め料だもん。」
お構いなしに要求を押し通す若菜に吹き出した。
「フフフ、いいわよ?あなた面白い子ね、上原さん。」
「ありがとう。ねぇ探偵さん、探偵料一千万円でいい?口止め料込みで。」
「い、一千万!?い、いいです!秘密は墓場まで持っていきますよ!」
喜ぶ中島と工藤。
「た、探偵料払わすの!?しかも私を尾行させてたの??尾行された探偵にお金払う私って間抜けじゃない!?」
「ドンマイです。」
「…」
悪びれる様子もなく淡々と言葉を並べる若菜に何となく魅力を感じる涼子だった。
「まぁいいわ。後の一千万は上原さんのお小遣い??」
「私はお金はいりません。探偵さんに色々やってもらう事があるからその軍資金です。」
「マジ?まだくれるの!?でも…ヤバい橋渡らせるんだろ?」
「当然。」
「ハァ〜、やっぱりね…。でも何かスリルあって楽しそうだな。しょうがねぇ、付き合ってやるよ、最後までな!十何年もそのオネーサマつけてるのも飽きたしな。」
「はぁっ!?あなた達ずっと私を尾行してたの!?」
「ああ。依頼主はコロコロ変わったけどな。あんたが北海道に行った時から今までずっと尾行してたよ。」
「…暇な人ね。」
「こら!!俺らは依頼されたからずっと尾行してただけだぞ!?決して暇な訳じゃないぞ!?」
「ハイハイ。そっか、田口が私の前に現れたのも私がどこにいるかずっと把握してたからなのね。」
「警察への復讐という名目で言葉巧みに瀬川さんを手の中に入れたのよ。失礼だけどもういくら見かけが若くても43歳。風俗では働き口がなくなくなるわよね?かと言ってまともな働き口もないでしょうしいいお金を稼いでいたでしょうからパートで稼げる給料に満足できる訳もないだろうし。けっこういい生活してましたよね?浪費家ですもんね。だからあまり貯金もない。いや、稼いだお金をパーッと使って嫌な過去を忘れようとしてた、か。そのタイミングでアプローチしたのよ、多分。」
「随分はっきり言ってくれるわね。」
「事実だから。」
「フフフ、確かにね。」
田口が現れたタイミングはまさにいい歳して風俗で働いていていいのかという思いを抱いた頃なのであった。そこまでズバズバ言ってくる若菜が逆に気持ちよかった。