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LADY GUN
【推理 推理小説】

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同じ穴のムジナ-1

 瀬川涼子を追い渡辺麻耶のアパートの部屋の前まで来た若菜。中には色んな意味で重要な人物が2人もいる。恐らく鍵は掛かっているだろう。勤務外だがLADY GUNをそのまま携帯してきた若菜はそれを取り出し右手に握り締める。中から物音はしない。もう麻耶が殺害されている可能性もある。しかし積もり積もった恨みを持っているであろう涼子はすぐには殺さないだろうと考えた若菜はインターホンを押した。
 少し間があったが応答があった。
 「はい。」
どちらの声であるか分からない。隣住人だと言って出てくればそれは麻耶であろうと読んだ。ドアが開いた一瞬が勝負だ。瞬時の判断が必要だった。
 「すみません、隣の者ですが宅急便の荷物を預かっているのですが。」
やはり間があく。恐らく応答しているのは麻耶であろう。涼子の指示を仰いでいる事が予測できる。
 (渡辺麻耶がドアを開けそうね。なら強引に飛び込んで瀬川涼子を牽制しないと…。)
とっさに決めた。ドアが開きそれが渡辺麻耶なら突入だ。
 「今開けます。」
カチャと鍵が回る音がした。そしてドアが開く。瞬時に顔を確認する若菜。麻耶ではなかった。瞬時に判断し若菜は涼子を押しのけるように突入する。
 「瀬川涼子ね!」
銃を構える若菜には、同じく銃を構える涼子が見えた。
 「あなたがどうしてここに…?」
 「つけられたお返しよ。」
 「つけて来た…?」
 「そうよ。」
対峙する2人は大きな緊迫感をもたらす。気を緩めると一瞬にしてどちらかが命を落とす事になるだろう。それほど張り詰めていた。にも関わらず若菜は意外な行動をとる。
 「瀬川涼子、あなたは私を撃たない…。」
なんと銃を下ろしたのだ。涼子はその行動に驚いた顔をしていた。
 「なぜそう思うの?」
若菜は涼子の目をじっと見ながら言った。
 「あなたに私を殺す理由がないから。」
そんな若菜に涼子はフッと笑い銃を下ろした。
 「優秀な刑事ね。」
元刑事である自分には理由もなく平気で人を殺せる訳がないという考えからであろうと理解した。
 「サイレンサーか…。」
涼子の銃を見てから振り向き部屋の中を見る。
 「遅かったか…。」
若菜の目にはベッドの上で頭を撃ち抜かれて息絶えている麻耶が見えた。
 「湯島武史とその一家を殺害したのはあなたね?」
笑みを消して答える。
 「ええ。」
 「だよね…。」
そう言って下を向き溜め息をつく。そして急に顔を上げて言った。
 「今から私に付き合ってくれれば見なかった事にする。でもそれが嫌なら今すぐ逮捕します。」
 「えっ…?あなた何を言ってるの?」
意味不明な言葉に驚く。
 「湯島と渡辺麻耶に復讐を終えて大人しく牢屋に入るつもりなんてないんでしょ?」
 「ええ。でも何であなたについていかなきゃならないの!?」
 「どっちか選びなさい!私に逮捕されたいの!?ついてくるの!?どっち!?」
 「あなたは私の味方…?」
 「敵でも味方でもない…。同じ穴のムジナよ。」
 「同じ穴のムジナ…」
涼子はその言葉で全てを理解した。
 「あなたについていくわ…。」
 「それでいいのよ。」
若菜は張り込みをしている中島に電話をする。
 「誰か通行人いる?」
 「いませんよ。」
 「ありがと。」
電話を切り涼子の手を掴む。
 「行くわよ?」
 「ええ。あなた本気?」
 「本気よ?正気ではないけれど、ね。」
涼子は若菜を非常に優秀な刑事だと認識している。そんな若菜に闇を感じた。若菜は周りを良く確認しながら涼子と部屋を出る。音を立てぬよう階段を降り街灯のなるべく届かない路地を通り抜け現場を離れる。そして追いかけてきた中島に車の手配を依頼した。
 「中島さん、申し訳ないけど地獄の果てまで付き合ってもらいますね?」
 「え〜?マジですか〜…。でも刑事さん、ただの刑事じゃないね?何かをしでかそうとしてるね?いいですよ。面白そうだからついてきますよ、地獄の果てまで、ね。」
探偵魂をくすぐられてしまった中島だった。


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