婦警のプライド-1
普段生活していても気付かないビルの一室に中島探偵事務所はあった。まだ電気がついている。警戒しながらドアをノックした。
「はい。」
ドアが開くと髭面の男が煙草をふかしながら出てきた。
「警察のものです。少しよろしいでしょうか?」
「け、警察!?ど、どうぞ!」
抵抗するかとも思えたがすんなり通された。中にはもう2人いたが、見た目は普通の男達だった。どちらかと言えば石山のほうがよっぽどたちが悪そうな容姿であった。対応も横暴ではなくピップ対応級のもてなしに少々照れる。
「警察の方が何の御用で…」
「あなた達が依頼されている仕事の中で美山静香と瀬川涼子という女性の追跡調査について聞きたい事があります。」
ビクッとして慌てると思いきや、あっさりしたものだった。
「あー、あの件ですか。少しお待ちを。おい、工藤!資料持ってこい!」
「はい!」
部下が資料を取りに行く。
「あの依頼はもう打ち切りになりましたからね。」
「え?」
「半年前かなぁ。電話があってもう終わりでいいって。契約が少し残ってたけど、一年契約で金は貰ってたんだけどね。返金は一切いらないって。しかしいい仕事だったんだけどね。年間5000万もくれたからね。ただつけて所在を確認してるだけでよかったからね。」
「そう。」
部下が資料を持って来た。
「美山静香は九州の福山県に移り住んで彼氏と結婚して幸せに暮らしてるよ。ずっと見張ってるが波も立たないような穏やかな生活を送ってるね。瀬川涼子のほうは荒れてるね。北海道に行きソープランドで働いた後、兵庫へ行きまたソープランドで働き、大阪へ行き売春組織で大御所相手に荒稼ぎしてたね。その後東京へ行き売れない女の芸能人やモデルが良く所属する売春組織に入って麻薬を売るようになったね。そこらで悪い男とつるむ姿が見られ、なぜか被災地のいなぎ市へと行き、そこで調査打ち切りになったんだよね。」
「麻薬の話とか平気でするんですね。」
「まぁ自分がやる訳じゃないし影から見てるだけだからね。いつでも私情をはさまず客観的にが探偵の基本だから。」
「そうですか。依頼人からは今も連絡ありますか?」
「ないねー。あれ依頼ピタリと止まったよ。まぁ麻薬が出てきた時点でヤバいと思ったけどね。あまり関わらない方がいいんじゃないかってね。」
「そうですか。では資料はお借りしていきます。もし連絡あっても警察来た事は内緒に。」
「もちろん!探偵は信用第一だからね!」
「助かります…(とか言いながら顧客情報ポンポン渡してくれること…)」
どこまで信用できるか分からないと思ったが、それほどシリアスな案件を扱う探偵事務所には見えなかった。田口とグルになっている可能性は低いと判断した若菜は連絡先を置き、事務所を後にして中央署へと戻った。