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LADY GUN
【推理 推理小説】

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湯島武史-10

 それから事細かに自分の知っている事を若菜に伝えた湯島。優里が湯島を初めてイジメた日から、レイプから足を洗った日までの事を全て若菜に証言した。その中でやはりどうも何かが引っかかるのだ。何か見落としているような気がする。
 「何か引っかかる事がありますか?」
湯島が聞いた。
 「矢沢さんや湯島さんの証言で、いろんな繋がりが見えて来ました。でもどうしても田口の麻薬を取り仕切るリョーという人間には辿り着かないんです。でもお二人の話の中で、どこかにヒントが隠されているような気がしてならないんです。」
リョーと呼ばれる女の謎だけがどうしても解けず苦しんでいた。そんな若菜に湯島が言った。
 「パッと見つけた人間にそんな重大な役割を任す訳はないと思います。田口からどうしても逃げられない理由…、弱みを握らていて、しかも世間的にあまり表沙汰に出て来れないリョーという人間…。僕は一人だけ思い当たる節がある…。」
 「えっ!?本当ですか!?それは誰ですか…!?」
藁にもすがる思いで湯島を見つめた。
 「麻薬を扱わせるんだ。麻薬捜査というものをある程度知っている人間を使いたいはずだ。すなわち警察。」
 「内部にいると!?」
 「いや、もういません。過去に警察に所属していた人間です。しかも警察を恨んでいる。彼女の名は…」
 「誰…?」
 「瀬川涼子。」
その名前に衝撃が走る。
 「瀬川涼子…、あなたを捜査して、最後に…」
 「そう。レイプした刑事。現在行方不明とされてるはずです。彼女は弱みを背中に背負って歩いているようなものです。田口は彼女を見つけ、おそらく自分が刑事として僕を追っている時に渡辺麻耶が捜査情報を僕に漏らしていた事をバラしたのでしょう。警察に裏切られた気分になった事でしょう。加えて失踪後、彼女の捜索を早々と打ち切った警察に見捨てられたと怒りを感じた事でしょう。しかもその渡辺麻耶がレイプされた婦警という事で優遇されて復職した事を知ればなおさら恨む。言葉巧みに田口に操られ、手下になっているのだと思います。どっちにしろ彼女は警察を恨んでいる。脅されてしている訳ではないのが厄介かもしれません。リョーと呼ばれる女は瀬川涼子だと僕は思います。」
 「若くはないけるども物凄く美しいとされています。」
 「瀬川涼子は美しかった。女を磨いていました。現在43、4歳ぐらいでしょうか。でも年齢よりも若く見える可能性は十分にあります。それに田口が瀬川涼子を見つけるのは難しい事ではなかったはずです。」
 「どうしてですか?」
 「僕は美山静香もそうですが、瀬川涼子には探偵を雇い所在をずっと把握できる状態にしてありました。年契約で金を振り込んでましたから。それは全部高田に引き継ぎました。高田がそれを田口に任せたとなればいつでも瀬川涼子がどこで何をしているか把握できていたはずです。だからもしかして美山静香の所在も把握しているかも知れません。」
 「その探偵事務所、覚えてますか!?」
 「はい。中央駅近くに事務所がある中島探偵事務所です。今もあると思います。」
 「ありがとうございます!」
若菜は湯島の自宅を飛び出し石山の車へ急いだ。
 「どうした?何かあったか?」
息を切らしながら若菜は言った。
 「リョーは瀬川涼子です!!」
 「な、何…?」
耳を疑った石山。
 「説明は後です!今すぐ中央駅近くにある中島探偵事務所に向かって下さい!」
 「分かった!」
石山はタイヤの音を鳴らし急発進して車を走らせた。若菜はいよいよ瀬川涼子に辿り着くのであった。


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