投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

LADY GUN
【推理 推理小説】

LADY  GUNの最初へ LADY  GUN 337 LADY  GUN 339 LADY  GUNの最後へ

湯島武史-9

 若菜はそんな2人の姿を見てゆっくりと口を開いた。
 「私は湯島武史さんの証言は十分に信じられると思ったし、逃亡する恐れもないと感じました。それに事件から足を洗ってから今まで、刑務所の中にいるのと同じくらいに苦しみ、そして罪を悔いてきたと感じます。湯島武史さんは麻薬にも関係ないし殺人を犯した訳でもありません。ですから湯島さんが起こした事件についての時効は15年。もう時効です。」
 「えっ?でも…」
そんな事を考えた事のなかった湯島は驚いた。
 「拘束しなくても湯島さんはきっと捜査に協力してくれるでしょう。それに警視庁も時効になってから犯人が分かったなどという失態は公にしたくないはずです。あなたなら警察のチンケなプライドを知っているでしょう?ですから私は特に身柄を拘束する必要はないと判断します。」
 「い、いやしかし…!」
 「私はあなた達の幸せを壊したくありません。こんなの警察失格かも知れませんが、壊す必要のないものは壊したくないんです。きっと湯島さんは田口のような人間にしたくないと願い、あんなに明るくていい子供に育てたのではないでしょうか?私はその愛情を無駄にはしたくないんです。これからも捜査に協力してくれる事を信じて、私はあなた達の幸せを応援したいと思います。」
 「刑事さん…」
湯島は泣き崩れた。そんな湯島を介抱する絵里。その姿がとても眩しく感じられた。罪を償わなければいけない気持ちと、今の幸せを壊したくない気持ちでずっと葛藤していた。苦しかった気持ちが今、ようやく解放された。
 「上原さん、あなたは俺が知っている警察には当てはまらない人です。警察は嫌いだが、あなたは信じられる…、事件を起こしている最中に出会っていてもそう思ったかもしれません。ありがとう。」
 「いえ…。」
晴れやかには笑えなかったが、最高に気持ちが良い微笑みを浮かべた若菜だった。


LADY  GUNの最初へ LADY  GUN 337 LADY  GUN 339 LADY  GUNの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前