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LADY GUN
【推理 推理小説】

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明かされる全貌-2

 若菜は矢沢の正面に座る。矢沢を見据える若菜から台風並の暴風が吹き付けられていると勘違いする程の迫力を感じる。若菜は矢沢の目を見つめたまま重々しく口を開く。
 「率直に言うわ?神の名前は…?」
矢沢に動揺がありありと感じられた。そう簡単に言える名前ではない。警察が長きに渡る捜査の中でとうとう辿り着けなかった名前だ。矢沢の額から汗が垂れる。
 「暑いの…?」
若菜はハンカチを取り出し矢沢の額に寄せる。
 「だ、大丈夫です…!」
体を後ろに逸らし手で汗を拭う。心なしか息が乱れているように思えた。そんな矢沢をじっと見つめながら落ち着くのを待っていた。矢沢が息を大きく吸い、一気に吐き出すと再度同じ事を聞く。
 「神の名前は…?」
もうダメだ、逃げられない…、矢沢はそう観念にも似た気持ちを抱く。自分が今から口にする言葉の数々が世間をどれだけ動かす事になろうか考える余裕もなく、矢沢はとうとう禁断の封印を解く。
 「ゆ、湯島…」
 「湯島…?」
 「武史…。」
若菜はとうとうその名前を聞いた。それだけでエクスタシーに達してしまいそうな程の興奮にも似た感情を抱いた。
 「湯島武史…?」
うなだれるように言った矢沢。
 「はい、湯島武史です…。」
とうとう明かされる神。その瞬間、神は神ではなくなった。様子を伺っていた刑事達はざわめき始める。すぐに湯島武史についての情報収集に動く。そんな雑音など耳に入らないほど神経を研ぎ澄ませている若菜。矢沢の一言一言を聞き逃さぬよう物凄い集中力で矢沢を一点に見つめている。
 「湯島武史とは何者?今の所在地は分かるの?」
矢沢は俯きながら答える。
 「俺の出身地、千城県の中央市に今も住んでます。」
 「…あなたは千城県出身なの…?」
 「はい。三下市です。」
 「湯島武史は中央市にいまでも住んでるのね?」
 「はい…。」
 「なんて事よ…。そんな近くに長年追い続けていた犯人がいたなんて…。」
裏をかかれるのは田口で散々慣れていたが、それでも悔しく感じた。
 「あなたも千城県出身ですか?」
 「ええ。しかも中央署の者よ。」
 「えっ!?なんでいなぎ市に?」
 「…、あなたが呼び寄せたのかもしれないわね。」
偶然ではない何かを感じる。棚からぼた餅…。ラッキーな意味合いに感じるが、しかし棚の上にぼた餅がなければいくら待っても落ちてはこない。若菜は棚の上にぼた餅を置く努力をしてきたからこそ棚からぼた餅が落ちて来たのだ。決して偶然でもラッキーでもない。努力の成果だったのだ。その結果、若菜は大きなものを手に入れようとしている。


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