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The sickness of love
【純愛 恋愛小説】

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The sickness of love-4

そんな欠伸をしている中河原を少しだけ可愛い、愛しいと感じた。
『先生気を付けなよ。俺が居なかったらヤラれてたよ。』
『ごめん…。』
春日はシュンと下を向きながら中河原の話を聞く。
『これからは、俺がしばらく図書室に居るからさ。』
中河原は無邪気な笑顔を見せた。
こんな笑顔を見たのは初めてで、春日は胸が高鳴った。
『中河原君は塾とか行ってないの?』
『俺は天然物だから。』
とつぶやく中河原に春日は意味が解らなかった。
『どうゆう…意味?』
『俺の親父は総理大臣の谷塚昭一(やづかしょういち)でお袋が、女子医大の教授の浅尾万里菜(あさおまりな)なんだよ。出来の良い二人から産まれた俺は天然物の天才って訳。』
春日は呆然と立ち尽くした。
『中河原君の家庭調査表には何も書かれてなかったけど。』
『俺は養子になったんだよ。資産家の中河原孝のね。』
『中河原君…もう良いよ。目が泣いてる…。』
春日は中河原の目を見つめた。
『俺は好きで頭が良い訳では無い。好きで金持ちな訳では無い。俺はまだ子供で居たい。俺は玩具では無いんだよ。先生…俺の居場所何処ですか?』
いきなりそんな事を言われ、返す言葉が無かった。
『俺の事を先生なら解ってくれるよね?』
その言葉に春日はただ中河原を抱き締める事しか出来なかった。
『中河原君…。私…。』
春日が守りたいと思ったのは初めてでどうしたら良いか分からないけど、ただ抱き締める事しか出来ない自分に情けないと思った。
中河原は複雑な家庭で春日には中河原の気持ちが全て解る訳では無い。
中河原の居場所が私になれば等考えたが、春日は中河原との一線を越えてはいけないと強く思ったので、違う方法を考えるつもりでいた。
『有難う。俺は少し楽になった。』
そう言うと、春日の手を退けて春日の家に向かって歩き出した。
二人は後ろ姿だけを見ると、恋人同士の様に見えた。
家に送って貰うと、玄関先で中河原は携帯番号とメールアドレスを書いたメモを春日の手に渡した。
そのメモには中河原らしい綺麗な字が書かれていた。
部屋に入ると、中河原のジャージを脱いだ。
仄かに中河原の香水の臭いにポケットには黒いハンカチにポケットティッシュが入っていた。
『あれ…?』
もう一つ生徒手帳が入っていた。
一番後ろのページに春日の写っている写真が入っている。
きっと誰かから貰った物だろう。
春日は生徒手帳に入っている写真を自信のある写真に変えた。
それは高校時代の春日の写真。
春日はまだ自分の気持ちを言わないと心に強く誓った。
中河原の居場所探しは春日が一人で手におえる物ではなかった。
ベッドの上に寝転んで中河原の事を考える。
『私にとって中河原君がかけがえのない人になってきてる…。まだ中河原君は未成年だから、私がサポートしなきゃなぁ…。』



次の日、職員室に入ると田中のデスクの上が綺麗に何もなくなっていた。
そして、他の先生方が田中が辞めた事を教えてくれた。
放課後の図書室で春日は珍しく仕事が早く終ったので、本を読んで居た。
心理学の本。
そして知らないうちに眠ってしまった。
『中河原君…。好きだよ。でも言っちゃいけないの…。』
寝言を言いながら眠る隣は微笑む中河原の姿があった。
『素直に言えばいいのに…。』
中河原は可愛らしい春日の頬を人指し指でつついた。
午後七時。
『先生。もう七時だよ。』
春日は中河原に言われ、はっとして起きた。
『えっ…。私寝てた?』
顔に本の後がついていた春日に、
『もう二時間ほど寝てますが。』
中河原が本の後を撫でながら。


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