第三章-3
いったん布団に寝転んで、歯磨きを忘れたことを思い出して洗面所に行くと、伯母と伯父が外出着に着替えていた。
「歯磨きする」
訊かれもしないのに言うと、伯母は頷いてから、
「ちょっと伯父さんと出かけてくるから、ちゃんと寝ていなさいよ」
どこへ、とは訊かなかった。
（タエの話をするんだ……）
ことさらゆっくり歯を磨いた。二人が出て行くのを確認するために。
伯母は一度振り返ってから黙って戸を閉めた。間もなく車の音がして遠ざかっていった。
願ってもないチャンスが訪れた。こそこそしないですむ。私はわざと足音を立てて歩いていった。いくぞとタエに知らせるように……。
襖を開けるとタエは浴衣を着て布団に座っていた。
「伯父さんたち、どこか行ったよ」
「どこ？」
「知らないけど、車で。誰もいないよ」
私はタエの横に座って肩の辺りに顔を押しつけた。
「坊ちゃん……」
「タエ……好きだ……」
用意していた言葉ではない。胸が詰まる想いから自然にでたものであった。
タエは浴衣の紐を解きながら、
「坊ちゃんもエロしたいのか……」
訊くでもなく、呟くように言った。
「エロ？」
タエの顔に表情がなくなって、その顔はとても大人に見えた。
浴衣が脱ぎ捨てられたことで私の頭の中は光にあふれて一瞬真っ白になった錯覚が起った。
桃の二回りも三回りも大きな隆起がスリップを盛り上げている。一緒に風呂に入った時とは私の意識はまるでちがう。絶句して唾を飲み込んだ。
「伯母さんたち、いないんだな？」
「うん……車で……」
やっとそれだけ言って頷くと、タエはスリップも脱ぎ、さらにパンツも引き下ろした。その動作の悩ましさに目を奪われ、現われたぷよぷよの裸身を眼前にするに及んで私は言葉を失った。股は真っ黒である。
仰向けになったタエは無表情のまま、
「してもいいよ。エロ……」
漆黒の股間が心持ち開かれ、裂け目から桃色の内部が見えた。魚を切り裂いたような生々しい色だった。
（セックス！……）
自慰の陶酔の中で思い描いた秘口は、思えばいつもタエのモノだった。
『行為』の知識の断片はあっても、何をどうすればいいのか、どうしたらいいのかとっかかりがわからない。
その様子をじっと見ていたタエは体を起してきた。
「ちんちん出しな」
パジャマのゴムに指をかけてきた。
「自分で脱ぐ……」
突き上げたペニスが過敏になっていて微妙な状態だった。
立ち上がって擦れないようにそろそろと脱いだ。
「坊ちゃんも毛ェ生えたか……。あん時はなかったもんな」
まだ薄いけれど根元はもやもやと黒ずみかけている。
ズキズキと痛いほど硬い。
（ああ……出そうだ……）
射精感が寸前まで迫っていた。
「タエ、出ちゃう……」
「出ちゃう？」
タエの目の色が変わって顔を寄せた。
「どれ、どうやって出る？」
ペニスの間近まで来た。タエの体臭が流れてきて私の昂奮はさらに高まった。
「擦ったら出ちゃうよ」
言い終わらないうちにタエの手が伸びてきて逃げようがなかった。いきなり握られ、
「あっ」
その刺激で呆気なく噴出した。
「ああ！」
精液はタエの顎に飛び、乳房にも直撃した。
なおもどくんどくんと噴き出てくる。私は衝撃に耐えながら膝を折り曲げて呻いた。
タエも驚いたようだ。声こそ出さなかったが、口を大きく開けて目を見開いたままペニスを見つめていた。
「出ちゃった……」
気恥かしさに股間を被って紙をさがした。掌はぬるぬるだ。
「紙ない？」
タエが箪笥の上からちり紙を取ってくれた。直射を受けたオッパイから液が筋を引いて垂れている。
べとべとして紙が手にくっついてしまう。タエは乳房を拭きながら臭いを嗅いでちょっと顔をしかめた。
「やっぱり変な臭いだな……。みんなおんなじなんだな……」
私の体はいつもと明らかにちがっていた。射精すればすぐに委縮していくのに、この時は硬いまま突き上げている。初めと比べれば勢いは劣るものの、押さえると弾き返してくる力はある。何より気持も阻喪していない。
タエはふたたび仰向けになり、今度は大きく脚を開いた。ねっとりと濡れた割れ目。
「いいよ……坊ちゃん」
「タエ……」
「エロしていいよ」
膝をついてにじり寄る。タエは迎えるように両腕を伸ばした。
「坊ちゃん、好き……」
「タエ……ぼくも好き……」
（挿れる……）のだ……。
ぎこちなく近づく。現実の感覚が遠のいていく気がしていた。
腰を突き出すようにして、先を宛てがい、押し出しただけで抵抗もなくぬるりと潜った。痺れるような快感が広がった。
「ああ……」
（気持ちいい……）
そのままタエにかぶさった。
「ああ、坊ちゃん……入った……」
温かい……。確かに入っている。
タエは口を閉じて眉間に皺を寄せて顔を歪めている。
「タエ、好きだ」
「坊ちゃん、坊ちゃん。あたしを嫁にして……気持ちいい……」
タエが脚を絡めてきて私の体を引きつけたと同時にふたたび射精が起こった。
大きく突き上げてくる深く広がりのある快感。タエと一つになっている感激が相乗的歓喜となって私を翻弄した。肉体の体温と蠢きが沁み渡ってきた。
（ああ……）
彼女の全身で射精が誘発されたのだった。……
タエが洩らした言葉を思い出していた。
（気持ちいい……）とタエは言った。自分と同じように気持ちよかったのだろうか。
体を起こすと弾き出されるようにペニスが抜けた。
玄関が開く音がした。
「坊ちゃん、早く行って、怒られる」
タエは慌てて起き上がって浴衣を羽織ると電気を消した。私は脱いだものを丸めて掴むと部屋を出た。