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蔵の嗚咽
【近親相姦 官能小説】

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第三章-2

 秩父駅前の案内所で付近の地図をもらうと、時間を確認してから歩き出した。
いくつか寺巡りをすることにした。初めからそのつもりでいたのである。どうせ一泊しなければならない。あまり早く行きたくなかった。

「伯母さんの様子がおかしいのよ。言ってることがわからないの」
 まだ六十を過ぎたばかりだが、数年前から認知症なのである。最近さらに進行しているようだという。いつからか人を避けるようになり、近所付き合いもほとんどしていないらしい。
「親切にしてくれる人もいるんだけどすぐ疑ってかかるみたい。民生の人も追い返されるらしいわ。みんな敬遠しちゃうわよね」
 なぜか我が家にはちょくちょく電話がくる。
「いまでもお前が可愛くてしょうがないんだよ。隆司ちゃん大学出たの?って。三十にもなるのにね。様子見てきてよ」
 夏休みだった私に、母は頼むというより当然行くべきだという強い調子で言った。伯母さんに一番世話になったのはお前なのだ。その上、結婚もせず気楽な独り身。とは言わないが、私が暇なのは事実で、表面上は素直に頷いた。
「次の日にはお父さんと行くから、お前は自由にしていいよ。とにかく先に様子を見てきて」
 どこかぶらりと回ろうか。考えながら気持ちは乗らない。『あの家』に抱く複雑な想いがすべてを沈み込ませていた。


 伯父とタエが蔵に入った夜の翌日だったか、伯母が珍しく伯父に詰め寄ったことがあった。大声こそ出さなかったが唇がわなわなと震え、怒鳴り散らすより激しい怒りが伝わってきたのを憶えている。

「あなた、この間、タエの家に行かなかったでしょう。どこへ行ってたの?あんなに暗くなるまで」
「行ったよ。留守だったんだ」
「そんなばかな。タエを連れて今後のことをはっきりさせるって言ったじゃないですか。それを連絡しないで行く人はないでしょう」
「いると思ったんだ」
「今日たまたまあちらから電話があって、留守してないって言ってましたよ」
「日を勘違いしてるんだろう」
「違います。三年も前のことじゃないんだから。そういえば去年も行きましたね」
私とタエがいることなど気にしていない。私は伯母の押し殺した剣幕にただ黙っているだけだった。

「タエ、どうなの?この前うちに帰ったの?伯父さんと一緒に帰ったの?」
「憶えてないよ、タエは」
「そのくらいのことはわかるでしょう。いくら馬鹿だって」
「いい加減にしないか。子供がいるんだぞ」
「タエ、どこに行ったの?何をしたの?」
「何をって、どういうことだ。もういい!」
伯父は声を荒らげると外へ出て行ってしまった。タエは怯えて俯いたまま身を硬くしているだけである。
 伯母は目頭を拭うと流しに行って乱暴に洗い物を始めた。

 一時間ほどして戻ってきた伯父は口も利かずに風呂にはいってなかなか出てこなかった。
「あんたたち、もう寝なさい」
まだ九時前だった。伯母の目は何かを考えているようで焦点が定まっていないように見えた。
 苛立った感情がぴりぴりと伝わってきて、観たいテレビを口に出せる雰囲気ではなかった。

 私が立ち上がるとタエも続いた。後ろを歩いてくるタエを意識しながら、私は異様なまでの昂揚感に包まれていた。それは『決意』とともに起こったもので、来るべき時が来たとでもいうような情念であった。
 伯父と伯母の言い合いが険悪な空気を家中に張りつめさせ、その話の裏側に潜む出来事の憶測が淫靡な想像をもたらした。そこには真夜中に蔵に籠ったタエと伯父の姿が映し出されて秘密の絵のように絡み合っていた。私の『体』は限界に近づいていた。

 タエの部屋の前で立ち止まり、私は声をひそめて言った。
「あとで、部屋に行く……」
行っていいかとは訊かなかった。タエは上目使いで私を見つめながら返事をしなかった。
 少し行って振り向くと、タエは突っ立ったまま私を見ていた。戸惑っているような眼差しであった。

(タエを抱きしめたい……)
明確な意識でそう思った。なぜ急にそんな気持ちになったのか。理屈ではない感情の発露だったとしか言いようがない。心は流動していて捉えることは出来なかったが、私の性的成長が妄想の世界を飛び越える時期だったというべきだろうか。……


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