護りたいのに・・-4
背中に、重く悪い荷物を背負った様に去っていく彼の背中をジッと見つめる樹里奈
「・・心配、なのよ・・私は・・」
「貴方が、しゅうが・・他人の為にいつも精を尽くす・・そんな優しい貴方がそんな
不幸な目に遭っているから・・・何より・・私は、私はっ!・・」
「貴方の事が大好きだからぁっ!!」
・・閑静な住宅街に響き渡る、愛する人を想う一人の少女の叫びは
理不尽と言う名の重りを背負う少年の背には届かず
ただただ、地面を手に泣きじゃくることしか出来ずにいた・・
「ただいまぁ」
いつものように電気も点けない母親の代わりにスイッチを押すしゅう
「母さん?」
辺りを見渡すも母の姿はなく、代わりに目についたのは・・
「アレ?」
居間の窓が開いている、彼は普段から戸締りはキチッとして、閉め忘れることはまずない筈・・、いつも家の事もロクにせず子供の様に、変なビデオとか見て過ごすが家でちゃんと待ってくれる母・・そんな母が今日に限って不在それを意味する事は・・
「まさかっ!」
嫌な予感がし、ふいに外に出ると
「母さんっ!」
首を激しく左右に振り、住宅街を見渡すも人気は無く
息を切らし寒く冷たい夜の町を駆け巡り、母を捜すもその姿は無く
目にするのは自分とは対象的に、幸せそうな家族連れやカップルばかりで・・
「母さん・・」
走り疲れ、膝を手にその足を止め、ふと幼い頃の自分とそして若く優しかった母の姿を
想い浮かべ、その目は次第に赤く染まって行き・・
「・・一体、どうして」
そう、心が弱っていると
ピーポーピーポー
向こうの道路から救急車のサイレンが鳴り響き、とっさに顔を上げ
道路には人だかりがあり、それを押しのけ進むとソコに一人の女性が頭から血を流し
倒れており、その人物は彼のよく知る女性・・
「・・か、か母さん?」
肌寒い季節だって言うのにコートも着ず、黒いセーターと紺のズボンだけの家服で身動き一つせず倒れ・・
「・・ねぇ、あの人・・怪我ヤバくない?」
「あぁ、なんでもトラックに撥ねられたとかって、それもかなりのスピードで・・」
「それじゃあ、もうー」
野次馬の心無い声に
「う・ううっ・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
この日の気温もまたとても冷たく凍りつく様な空気だった・・
第一章「護りたいのに・・」終
次回、第二章「私のしてる事って」 作成予定