投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

貴方を、護りたい・・
【純愛 恋愛小説】

貴方を、護りたい・・の最初へ 貴方を、護りたい・・ 6 貴方を、護りたい・・ 8 貴方を、護りたい・・の最後へ

護りたいのに・・-3

困惑するしゅう、もういい加減にしてくれと参るも
「何よ、あのままじゃ風邪引くでしょ、今帰ろうにも乾いてないよ、貴方の制服」
テレパシーでも使ったかの様に、彼の思考を読み取り
「何処にやった?まさか隠したんじゃ」
「馬鹿ねそんな訳ないでしょ、ちゃんと今お母さんがストーブとドライヤーでやってくれてるカラ」
「良かった、洗濯されたのかと想った」
「あぁ、その手があったか?」
「はい?!」
「あーいや」

「食べてくしょ?お母さん作る煮物は格別ヨ」
「・・そうするよどーせこの格好じゃー帰るに帰れないし」
「オッケー、じゃあついてまいれ」
そういってしぶしぶ重い足取りで彼女についていく
「あっ早々確信犯とか言わないでね」
・・もはや彼女のペースだ、そう感じ溜息をつくパジャマ姿の少年

「へぇー、それじゃ学校まである程度遠いのね」
テーブルの上に煮物や海老ピラフなどが置かれ樹里奈の母が夕飯の支度に勤しみ
「ほれっ、飲みねぇ飲みねぇ!」
隣で座ってる父が彼のグラスに飲み物を注ぎ、彼も咄嗟的に軽くお辞儀し、グラスを差し出し、樹里奈が何気に父が彼に注いだ物に目をやると
「ちょっと!ソレお酒じゃない!」
ソレはいつも父が愛用しているお気に入りのビール瓶だ
「何考えてるのよっ!止めなさいっ!」
咄嗟に父のビールを奪取すると
「なーんだよ、ちょっとしたジョークだってーの」

「笑えないって」
そう言いつつ彼でも口に出来る普通の麦茶に替えて

「もうー、すぐ調子に乗るんだから」
支度を終え、母も夕飯の輪に溶け込み
「しっかしまぁー、こんなことするとあれだなマルで婿を持った気分だな」
軽々しく愛用酒片手に申すと若い二人が慌てて
「ちょ、お父さん」
「べ、別に俺はその!」
「そういや、彼はお前のなんなんだ?」
「えっ?何ってそりゃー」
言葉に詰りカーテンの方に視線をやる

「なんだ、彼氏じゃないのか、ん?」
既に顔の赤い父
「そ、そんなんじゃないってばぁっ!」
頑なに否定する樹里奈しかし、しゅうは箸を持つも、その手を食事に進める事無く二人の
親子喧嘩を見つめる・・

ドクンッ

ふと彼の中で何かが呼び起こされる

ドクンッ

それは紛れも無い喜びに似せた嫌悪感

彼の視界がふいに真っ暗になった感じで、箸を置く
「あら?食べないの?」
彼の異変に気づいた母が問いかけるも
「スミマセン、なんだか食欲がなくて・・」
と、愛想笑いをし席を立ち、ストーブで乾かされている自身の制服に近寄り
「おーい、食わんのか?せっかく母さんが作った煮物を」
文句を彼の背中に向かって言うも返事は無く
「しゅう・・・」
彼女も席を立ち彼の身を案ずるも

彼は彼女の親に一言断り寝室で制服に着替える事にし

「しゅう、今いいかな?」
扉の向こうから落ち着いた樹里奈の声が聞こえる
「何、今着替えてるんだから入って来ないでよ」
「う、うん分かってる」

食事をしていた居間はすっかり静寂と化し父は風呂に入り、母は使い終えた食器を洗い
「・・今日はそのゴメン・・色々と振舞わしたみたいで」
「・・いいよ別に、君は俺の為を思ってやってくれた訳で」
まだ少し濡れてる制服に袖を通し、静かに口を動かし
「どうしてなの?」
扉の向こうから聞こえる彼の質問に視線を扉に向け
「どうして、これだけ親切にしてくれるんだ?」
「そりゃー心配じゃない、あんな雨の中走ってたら」
「そうかも知らないけどだからって家の中にまで連れて風呂に飯って・・」
「・・それは、だって」

彼の質問にどんどん口数が減ってゆき
「でも、有難う俺なんかの為に、ここまでしてくれて」
「しゅう・・君」
「正直ここまでしてくれる人なんて居なかった、今まで・・」

近くに居る母は在る程度、話が嫌でも耳に入ってくるも大人がいちいち口出しする物ではないとただただ黙って泡のついたスポンジ片手に食器を磨き

「そんな、そんな事ないよ!クラスの皆とか部員達だって・・」
「・・どうかな、そりゃー色々と慕ってくれてるとか言ってるけど」
眉を半分落とし、うな垂れて


「お邪魔しました」
樹里奈は彼を送り二人にお礼を玄関から響かせ、彼女の家を後にする

「待って、しゅう君」
ポツポツと言う雨水が玄関の方から鳴り続ける中、彼の背中を追う樹里奈
「何?忘れ物とかした?」
「・・ホントに良いの?今からでもお父さん引っ張り出して車を」
「ソレは可哀想でしょ!俺なら大丈夫だって」
「外はまだ寒いよ、いくら雨が止んだからって外だって暗いし」
「だから大丈夫だって、体だって暖まったし」
「夕飯は?食べてきゃいいのに・・」
「いいよ、うちに帰ったら母さんが夕飯作って待ってるだろうし、いっけねー電話するの忘れてた」

彼女からの反論も無いと早々に自宅へ足を運ぼうとすると
「夕飯を作るのは貴方でしょ?」
意表を突かれるかの如く振り向き
「・・な、何を言い出すんだよなんで俺が・・そういうのは普通に」
「おかしいよ、なんで家の事貴方がやらなくちゃいけないのよ」
「・・普通なら家帰って、宿題を片付けたりテレビ見たりする筈なのに」
黙って彼女の話に耳を傾ける
「・・春華から聞いたの、噂だとか言ってたケド」

「噂なら信じるなよっ!」
彼の突然の怒号に驚き、そして反撃し出す
「関係無いだろっ?そんなの君には」
「関係無いって、私は」
「そりゃ色々心配してくれたのは嬉しい、でもだからって昨日ちょっと知り合ったダケの
君に人の家庭の事情まで入り込まれる必要なんて無いだろ!?」
「でも、私は・・私はっ!」
「・・とにかく今日は有難うでももう俺の事は構わないでくれ・・いいな?」
「しゅう君」

そう言い残し、今度こそ蓮見家を後に去っていく


貴方を、護りたい・・の最初へ 貴方を、護りたい・・ 6 貴方を、護りたい・・ 8 貴方を、護りたい・・の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前