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透明な滴の物語U
【同性愛♀ 官能小説】

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先輩の企み-3


「祐梨!今、なんて言ったの?地方へ転勤するって?」
「はい。転勤です。」
「今のまま本社でいいじゃない!近くに借りて住めば済むことじゃない?」
「それも有りですけど、地方で修業したいって気持ちがあるんです。先輩だって言ってたじゃないですか、若いうちに経験を積みなさいって。人事部にもお話したんです」
地方への転勤希望を人事部に話せば、ほぼ確実にその通りになってしまうだろう。
聡美はうろたえた。
「うそでしょ?なんでそんな大事なこと簡単に決めちゃうの!?」
動転した聡美の反応に、こんどは祐梨が驚く番だった。
ポカンとした表情で聡美を見ている。
その表情を見て聡美は我に返った。

「ちょっとお茶を淹れてくる」
かすれた声でそう言うと聡美は立ち上がり、ポットやお茶類の置いてあるテーブルへと場所を変えた。
聡美は白いカップに紅茶のティーバッグを入れ熱湯を注いだ。
大切な人を失うことへの恐怖。
それは大学時代に母を失って以来、聡美に付きまとう感情であった。
(失ってしまうのか。私はまた大切な人を失ってしまうのか…)
焦りと空虚な喪失感。
なにかに突き動かされるかのように、聡美は頭の中で策をめぐらせた。
(祐梨がいなくなってしまう前に、早くしなきゃ。早く何とかしなきゃ…)

会議卓の祐梨をあらためて見る。
ヨーグルトとサラダだけの食事に時間をかけて食べている祐梨。
そして、たまに下腹部を擦るしぐさを聡美は見逃さなかった。
聡美の直観が働いた。
(この子は便秘している)
熱湯を注がれたティーバッグは、三角錐のネットの中で茶葉が弛み、琥珀色に滲ませながら閉ざされていた香りを吐き出し始めた。
アールグレイの強い香りを微かに感じた。
その香りは、佐和子の家で味わったアールグレイを思い起こさせた。
聡美は少し前に、辞めた会社の先輩である佐和子にショッピングセンターで偶然出会い、そして佐和子の家で浣腸に興じたことがあったのだ。
身体の奥底で閉ざされていた欲望のマグマが滲み出てきて止まらなくなった。


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