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冥界の遁走曲
【ファンタジー その他小説】

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冥界の遁走曲〜番外編〜-7



アキレスとフォートレスは盾一列に並んで二人につっこむ。
前がファング、後ろがフォートレスだ。
…たとえ俺達が負けたとしても一秒でも長くお前達を止めてみせる!
対する相手は横に並んでこちらに向かってくる。
兄弟に向かって右に龍也、左に楓だ。
龍也の方が微妙ではあるが前に出ている。
龍也はすでに剣を上に振りかぶっている。
ファングは応じるように剣を横に振りかぶる。
お互い力をこめて剣と剣をぶつけ合う。
周りにすさまじい衝撃の風が吹きすさぶが、楓とフォートレスは何もなかったように気にしない。
楓はトンファーに自分の炎を籠めている。
紅と黄昏の色を司る炎はあますことなくトンファーを覆っている。
楓はそれを目の前にいるファングにぶち当てようとする。
だが、そこに一瞬でフォートレスが入ってきた。
「兄者はやらせない!」
フォートレスはずっしりと盾を構える。
楓は構うことなくトンファーで盾を突く。
鈍い衝撃音が鳴る。
その瞬間、フォートレスの盾は爆発した。
楓のトンファーがまとったエネルギーが全て盾に注がれたため盾が耐えられなかったのだ。
しかしそれを気にすることなくトンファーは目の前にいる敵に向かう。
そしてそれはフォートレスをも吹き飛ばす。
吹き飛んだ先にはファングがいる。
兄弟はぶつかり合い、体勢を完全に崩す。
つまりは龍也の目の前で大きな隙を作ってしまったのだ。
「龍也!」
楓に言われずとも龍也は剣を振るう。
それは迷い無き一閃。
それは真剣ならば必殺の一撃だった。
だが龍也の剣は真剣にあって真剣に非ずだ。
威を以て断つ太刀はファングの武器をも破壊して兄弟もろとも斬りつけた。
兄弟はその場に倒れた。
龍也はゆっくりと剣を納める。
そして倒れている二人を見る。
「…これで終わりだな」
その目はまるで見下すような視線だった。
目的は相手の心をくじくこと。
そして自分達の邪魔をさせないことだ。
「我らの…負けだ…」
悔しそうに、そして未練を残したようにフォートレスがゆっくりと呻く。
その言葉を聞いた楓は炎を消してトンファーを腰に納める。
「楓」
龍也が楓に視線を戻す。
「ええ」
楓には龍也が何を言いたいか分かっているつもりだった。
これからアキレスの元へと行く。
そして、アキレスを止めるのだ。
だが…、
「もう少しここでゆっくりしてくか」
楓の意識が数瞬止まった。
「ちょ、ちょっと…何戦闘終わって速攻ボケてるのよ?」
「別にボケてなんかいねえよ。
考えてもみろよ、今からアキレス止めに行くったってもう間にあわねえよ」
確かにアキレスが一人で去ってあらかなりの間が空いている。
「そんな…!?
それじゃあ死神は…母さんはどうなるのよ!?」
楓が目を滲ませながら龍也に問いつめる。
「大丈夫だ。
今回の任務にはもう一人いただろ?」
「…一神 癒姫の事?」
思い出したかのように楓がつぶやく。
ああ、と龍也は頷いた。
だが楓は納得していない。
「でもあの子じゃどう考えてもアキレスには…」
楓の癒姫に対する認識は弱いと言うことだ。
死神の娘という立場で次期死神を約束されてはいるが楓の情報では彼女は養女だ。
だから玄武とは血がつながっていないので能力も使えない。


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