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冥界の遁走曲
【ファンタジー その他小説】

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冥界の遁走曲〜番外編〜-6

…まだこいつらがいるもんな
もしも、の話は現実にはならない事が分かっているので思えることがある。
もしも昔の自分が今のアキレスを見ていたら。
…殺していただろうな。
即断だった。
自分の事だから、簡単に分かる。
それでも、今は違う。
だからこそ、
「俺はアイツを止める。
アイツにバカ野郎って殴りに行くために!」
「うん」
隣にいた楓が頷いた。
「アキレスは守れなかった事を後悔してるから死神を殺すって言ってる。
だから私たちはその間違いを正すんだよね?」
確認の問い。
口調には少々震えを感じる。
楓はまだ迷っている。
死神を選ぶことはすなわちアキレスを見捨てる事になるんじゃないか、と。
それでも龍也はそうは考えていない。
龍也はアキレスが守れなかった事を敢えて悪にする事でアキレスを戒める道を選んだ。
そう、戒としての御剣 龍也を貫こうとしているのだ。
…アンタにはそれしかないんだもんね。
親近的な視線を龍也に送る楓。
龍也はその視線、そして言葉を受けてたった一言返す。
「あぁ、安心しろ楓。
俺達は戒としての正義を貫くだけだ」
龍也はその意志を見せるように威太刀を再び抜いた。



ファングとフォートレスは龍也の言動を理解はしていた。
アキレスのしている事は端的に言えば八つ当たりなのだと、そう言いたいのだ。
敢えて『奪われた奴が悪い』という言葉を使ってアキレスへの感情よりも戒のしての理性を示したのだ。
「ならば決着を付けよう!」
ファングは青竜刀をフォートレスは盾を前に突き出す。
もうすでに体はボロボロだ。
今すぐにでも地面に倒れて休みたいと言っている。
だが、今はその願いを聞き入れる事は出来ない。
「目の前の敵を倒す為…!」
目的はいつの間にか変わっていた。
最初は足止めのはずであったが龍也の言葉を聞いて変わったのだ。
「全力であいつらを倒すぞ。
いけるか?フォートレス」
フォートレスは兄に向かって笑みを見せた。
「俺を心配する余裕があるならそれを全て目の前の敵に向けてくれ、兄者。
でないとあいつらは倒せない」
「ああ、そうだな」
苦笑。
そして視線を目の前の少年少女へと送る。
その、少年少女は
「楓、いけるな?」
最後の確認。
これで決着がつくことを龍也は分かっている。
もちろん楓も。
「大丈夫よ。
…絶対に勝つわよ」
ヘッと龍也は鼻で笑い、
「当たり前だろ?
俺の戒での戦績しらねえのか?」
187戦187勝。
それは正確に覚えている。
彼の戦績が自分の戦績でもあるのだから。
「数ある過去の勝利も今や未来の戦いには何の意味も為さないのよ?
知らなかった?」
知らないはずがない。
それはかつて龍也と楓がアキレスとの特訓の後にアキレスが言っていた台詞なのだから。
「…行くぜ」
それだけ言って二人は同時に視線を二人に移す。
そして、最後の決着が始まる。


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