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栗花晩景
【その他 官能小説】

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山河独歩-4

「いいお風呂。さっぱりしたわ。敷いてもらっちゃって、旅館みたい」
そこに二人分の布団が並んでいることが当然のようにぺったりと座り込んだ。
「義姉さん、花梨酒飲む?」
「作ったの?」
「いや、市販のだけど」
「飲む飲む。寝酒しようか」
由美子は腹這いになって子供のように脚をばたつかせた。浴衣から覗いた白い太ももの肉感にどきっとした。気持ちと体が変化したのはその時である。
 久しく実感しなかった動きが下腹部に起こって戸惑った。押さえるとはっきり漲った。むろん昔の勢いはないが十分に硬い。そうなると長い間眠っていただけにことのほか敏感であった。

 グラスを枕元に置き、そのまま由美子に寄り添って横になった。体が触れても避けるでもない。
「静かね……」
「県道の方は車が多いけど、この辺は住民しか通らないから」
「一人で淋しくない?」
「気楽でいいけど、たまにはそう思うね。ずっといるわけじゃないから。今日は義姉さんがいてくれるから楽しい」
「ふふ、そうならよかった……」
背中をさすった。
「マッサージしてくれるの?」
緩ませた頬が真顔に変わったのは私の手が脇腹から尻の丸みに達したからである。
「どうしたの?酔っぱらいましたか?」
「義姉さん……抱いていい?」
由美子はくすくすと笑ってから、ふっと息を吐いた。
「もう、からかわないで。おばあさんに何言うの。いけませんよ」
「そんなつもりじゃなかったんだけど……」
私は由美子の手を導くと硬くなった股間に押しつけた。
「本気なの?」
「急に気持ちがどうしようもなくなったんだ」

 由美子が仰向けになり、私たちは見つめ合った。
「無理よ。昔とちがうのよ」
目を伏せ、ふたたび視線を合わせた瞳が光った。

「見て……」
いきなり胸をはだけた。
「こんなになっちゃって。もうとっくに女じゃないのよ」
子供を産んだせいか昔より大きい。やや左右に垂れ下がった乳房は張りは失せている。だが萎んではいない。瑞々しさの代わりに愛しさを掻き立てる艶めかしさがあった。

「義姉さんはきれいだよ。だから感じたんだ」
「昔の記憶がそうさせたのよ。もう体が違っているわ。主人とも亡くなる何年も前からなかったのよ」
「ぼくも、恵子が死んでからその気がなくなった……」
「それだけ恵子さんを愛していたんだわ。大切にしないと……」
「その気持ちとは別の想いだってある。急に目覚めた気持ちだ。船が転覆するみたいに」
言い終わらないうちに浅黒くくすんだ乳首をそっと口に含んだ。
「ああ……」
由美子は深呼吸するように胸を迫り上げた。快感が生まれている。

「無理だったら……」
小さな子供にするように私の頭を撫でた。
「困ったわねえ。がっかりするだけよ……」
「こうしてるだけでもいいから……」
優しく乳房を揉み上げる。
「ああ……恨まれちゃう……」
たしかな反応を示した。

 左右交互に唇を這わせる。若い頃には出来なかった遅々とした動きである。
(憶えている……)
肌の匂い。
 由美子は心持ち顎を上げたまま目を閉じ、受け入れる態勢になっている。浴衣から腕を抜く時も私の動きに合わせてくる。
 口づけするとすぐに舌が触れ合った。彼女の手を下へ導く。握ると同時に舌が強く吸われた。
 長い口づけのあと、顔を歪めながら顔を振った。
「ああ、どうしよう……」
溜息とともに洩らした言葉は、閉ざされていた女の扉が開かれた瞬間だったのだろうか。

 体の隅々まで熱い女の血が浸透していくように全身が蠢き、肌は見る間に紅潮していった。快感の波にさらわれ、理性の岸からどんどん遠ざかり、もはやすがるものはない。いや、私がいる。

「こんな齢で、あたし……」
「義姉さん、齢なんて関係ないんだ……」
「ああ……ほんとに感じちゃう……」
下着を脱がせる時も体が自然に応じてくる。
(おお……)
白髪混じりの繁みにぽっかり顔を出した突起に息を呑む驚きであった。赤い宝石の輝きである。秘唇そのものは年相応にふやけたように見えるが淡紅色の溝は枯渇してはいない。十分に潤っている。

 目覚めた昂ぶりはとても抑制できそうもない。
「義姉さん……」
脚を割って身を入れ、身構える由美子に宛がう間もなく沈んでいった。
「あう!」
「むう……」
(痺れる……)
耐えられなくなって突き立てた。
「あ、あ、あ、……」
動きに合わせて由美子はのけ反っていく。
「義姉さん、イク……」
激しい迸りはない。呆気なく、つんと弾けて放たれた。受けた由美子は両脚をがっしり私に絡め、尻を浮かせて伸び上がった。

 朝、由美子は目覚めると私の布団にもぐりこんできた。まさぐり合い、やがて硬直した私を握って、
「あたしたち、お互い一人なのよね」
「うん……」
「気にしなくていいのよね……」
「うん……もう気にしなくていいんだ……」
 その日から彼女は私の真壁行きに合わせてやって来るようになった。用事がない限りそのまま一緒に過ごし、また二人で戻る。それが習慣になった。



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