そ-4
今でも、彼が私と付き合っているのが不思議でならない。
「トモコ・・・知子?」
ホテルの一室で桐生さんに抱きしめられ
キスをして私は息を吹き返す・・・
「桐生さん。好き・・・」
1週間前に私を抱いた野口さんの抱き方と桐生さんの抱き方は
色々な意味で真逆で。
どこまでも優しい桐生さんの手のひらは
私を翻弄させる。
そんなに優しく抱かないで。
壊れ物じゃないの。
野口さんみたいに無理やりにでも自分のものだって示して。
私は狡い。
桐生さんに抱かれながら
野口さんを思い出している。
「いたっ」
なに?
キスマーク?
「知子は総務だから・・・あとから分かるより自分の口から言うけど。
俺、来週1週間休暇届けだしたから」
各課の休暇届は最終的に総務部に集まる。
「そうなんだ。旅行?」
「今年銀婚式なんだ」
「そう」
「1週間、会社でも会えないから。ほかの男に牽制」
そう言って会社の制服のブラウスを着たら
見えるか見えないかのところを触った。
「私に言いよる人なんかいないよ」
「うちの部のやつが知子の噂してた」
「ほかの噂だよ」
営業部か。
そういえば佐藤さんに食事を誘われたっけ・・・