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性愛交差点
【その他 官能小説】

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性愛交差点-5

 美希との関係が熱を帯びてくると、夫婦の夜に影響が出始める。当然の成り行きではある。妻と交わるより何倍も燃えて排泄するのである。満足の時間は長くなる。気付かないうちに間引くように小枝子との回数は減った。
 初めのうちは流れに任せて夫婦の夜もこなしていたのだが、そのうち美希と会う日が決まるとその楽しみのために禁欲するようになった。小枝子から合図があっても眠った振りをしたりした。翌朝、小枝子は不機嫌を露にして目を合わせようとしなかった。

 ある夜、二日後に美希と約束をしていた彼は早めに布団に潜りこんだ。合図がありそうな気がしたからだ。生理期間を挟んで二週間接触がない。出産の前後を除けばこれほど遠ざかったことはない。
(そろそろ、ある……)
その間信彦は美希と会っているのだから特に悶えることもない。
(寝てしまおう……)
信彦は目を閉じた。意識しているとなかなか寝付けるものではないがとにかく顔まで布団を被った。
 何をしているのか、小枝子は来ない。片付けものはとっくに済んで風呂からも上がっている。義母はすでに休んでいる。考えているうちに彼は本当に眠ってしまった。

 胸苦しさに目を覚ましてぎょっとした。小枝子が馬乗りに跨っていた。布団ははがされ、彼の下半身はパジャマが膝まで下げられている。
「何よ……」
小枝子ははっきりとした声で言った。慌てて隣室を指差し、その指を口に当てて声が大きいことを伝えた。
 信彦をじっと見下ろしていた小枝子はうずくまっている陰茎を掴むとやおら咥え込んだ。そして乱暴に吸い立て、扱いた。
「む……」
その動きに義母を気にする様子はない。
 とたんにむくむくと勃起した。唇を狭めて上下に動く。唾液にまみれてねちねちと音がする。
(まずいぞ)
彼女の頭を押さえたのは音を制する意味もあったが、強烈すぎて一気に進んでしまいそうだったからだ。

 どう思ったのか、動きはゆっくりとなり、やがて口から解放された。
息つく間もなく四つん這いになる。陰茎を指で挟み、自らに押しつけ、ぬるり、沈み込んだ。
 ふうっと小枝子の息が吹きかかる。歯磨きの香りがした。
 すっぽり納まり、密着したまま腰がくねくねと回る。まるで迎え入れたペニスの形を確認するように……。

 小枝子はやや前傾姿勢になって声を呑み込んだ。それが始動だった。
いきなり急発進で前後、上下し始めた。動きは激しく大きい。ぬめりをくぐる粘着音。腰を落とす音。動作による擦過音。止めようにもその顔は一心不乱でどうしようもない。信彦も快感に包まれてパジャマの上から乳房を揉みしだく。
「あう」
隣を気にしている状況ではなくなった。今度は信彦が尻を抱えて突き上げる。
耳に小枝子の囁きが熱い息とともに吹き込まれてきた。
「イキそう……」
信彦も、
「イク」
抑えた昂奮が充満する。破裂する。
「くう……」
小枝子は信彦の耳を噛んで声を殺した。
「う……」
「あ……」
勢いよく放たれた。それを受けて膣が締まり、小枝子はおののくように痙攣して達した。

 呼吸が落ち着いても小枝子は信彦に乗ったままでいた。弛緩した熱い体が折り重なっている。彼もすべてを出し尽くして力が抜けて動く気が起きない。
 どのくらいそうしていたのだろう。気がつくとすでにペニスは弾きだされ、下腹のあたりは流れ出た液が凝固し始めていた。
 重い虚脱感を感じながら彼女の乱れた淫気について考えた。
営みがご無沙汰していたとはいえ、行為の後にこれほど長く密着していたことはこれまでにないことである。眠っているのではないことは微妙な動きでわかる。それなのに囁くこともしない。
 それに寝ている彼に挑んできたのも初めてである。しかもコンドームも着けずに。
(安全なのだろうが……)
それでも万一のためといつも要求をしていたのは彼女だ。
 鬱積したものがあったのだろうか。妻の重みを受け止めながら、彼は不気味なものを感じていた。

 何かを察知しているのだろうか。美希と会うために口実として飲みに行く機会は増えた。会えばシャワーを浴びるし、夫婦の営みも少なくなる。考えてみると隙はいくらでもありそうだ。慎重に注意をはらっていたつもりだが、これまでの行動から何か感じ取ったのかもしれない。
 だが疑いの眼差しや言葉を感じたことはない。そもそものんびりした性格である。
(思い過ごしだ……)
信彦は思い直し、それでも後ろめたさからくる苦い味を噛みしめた。

 翌朝目覚めると小枝子は信彦の布団に寝ていた。リビングから美佐子と有香の声がして飛び起きた。二人とも下半身裸であった。慌てて下着をはいた小枝子はぺろっと舌を出し、素早く彼の唇にキスをした。満たされた笑顔である。信彦はほっとした。

 


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