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淫靡眼
【その他 官能小説】

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その(三)-3

 五月に出会ってから何が何だかわからないうちに想いが募り、心は舞子でいっぱいになった。そして二人は運命であるかのようにがむしゃらに突進して匂い立つ性を結実させた。なぜ?という思念を挟む余地さえなかった。自分の行為、事態、結果、ましてや行く末など思慮のわずかさえ浮かべることなく過ごした時間であった。

 翌日、釣りに付いてきた舞子は体調がよくないというので途中で一人帰ることになった。
 武は瀬に立ち込んでアンマ釣りに夢中である。
「兄ちゃんもやろうよ」
「いま行くよ」
せせらぎの音がシャワーのように聴こえている。
「初めの一日二日は具合が悪いの」
生理で体がだるいのだという。
 私たちは岩に並んで座り、後ろで手を握り合っていた。

「今度会えるのはお正月かしら……」
「わからないな。私立の推薦が通れば来られるかもしれないけど…」
私は答えながら、それまでに会えないか、何か方法はないかと考えていた。
(親に内緒で甲府に行くことだって出来る。日帰りは可能だ。どこかで落ち合って会うことだって……)
想いが広がり、舞子の手に力をこめた。

「もっと早く会いたいな」
「あたしだって……」
「あんまり会わないと彼氏が出来ちゃうかも……」
「そんなことないわ。達也が好きだから」
「ほんと?」
「うん……。達也こそ、好きな子いるんでしょ」
「いないよ、そんなの」

武がじゃぶじゃぶと飛沫を上げながら岸に近づいてきた。
「推薦、受かるといいね」
舞子は立ち上がって武に声をかけた。
「帽子かぶらないとだめよ」
「うるせえな」
私がなかなか釣りをしないので面白くないようだ。
「それじゃ、大物釣るか」
「俺、ヤマメ釣る」
二人で川の中央へ歩いていった。振り返ると舞子は堤を登り始めたところだった。

 釣りをして、武と話をしながらも常に舞子のことが頭を離れない。
(本当に起こったことなんだ……)
時々疼くペニスに手を当てると彼女の陰部が思い出され、そこに差し込んだ時の感触が甦る。
 それでもなお、昨日セックスした事実は、それは夢だと言われれば否定できないくらい現実感に乏しくもある。あまりに激しく、多くのことがありすぎた。しかもすべてが初めてのことだ。どこまでも柔らかく、しっとりと波打つ女体。乳房に触れる、乳首を口に含む。股間に広がる淫らな陰毛。そして自分を呑みこんだ亀裂。ああ、そして舞子はペニスを咥えたのだ。……

 舞子に魅せられ、耐えがたい思慕に燃え続けている。彼女も自分を好きだと言った。
(なぜだろう……)と思う。衝突したように互いが引き合ったことが信じられない。
 『臭い』のことが混濁していた。昨夜指先にあった臭いが精通を導いた『臭い』だと確信した。

(あの臭いだったのだ……)
感覚的に突如漂うあの臭いにまちがいない。だが、それがなぜ感じられるようになったのか。そこから先は何の手がかりもなかった。

 ぷるっと手ごたえが竿から腕に伝わってきた。
「武!大きい!」
竿を立てようにも容易に上がらない。ためるのが精いっぱいで、ともすれば伸されそうな強い引きである。魚体は見えないがそのやり取りで大物であることはまちがいない。
「ほんとだ、すげえ。あがるかな」
ぷるぷると竿が震え、水中でもがくまだ見ぬ魚の重量感が、揺れ動く舞子の肉体を連想させた。


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