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淫靡眼
【その他 官能小説】

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その(三)-2

 その夜、記憶の奥に眠っていた出来事がぼんやりと浮かび上がってきて、霧のように漂い始め、私はその記憶の不確かさに煩悶していた。

 武は昼間の疲れに九時前に眠ってしまった。階下に下りて行き、伯父と伯母に就寝の挨拶をした。
「明日、武くんと釣りに行くので早く寝ます」
万一あとで来られたら困るのでわざわざ告げにいったのである。
「勉強の邪魔しちゃってるね」
「いえ……」
階段で舞子とすれ違った。
「おやすみ……」
どちらからともなく言葉を交わした。


 電気を消して横になっていると足音が聞こえ、舞子が部屋に戻った。しばらく物音が途切れ、じれったいほどの間を置いて襖が開いた。
明かりで逆光になった舞子の顔が覗いて頷くのがわかった。
 舞子の部屋に入って襖を閉める時、舞子は口に指を立てた。子供みたいな動物の柄のパジャマを着ていた。

 抱き合ってキスして、蒲団に横になった。
「出来なくなっちゃった……」
「なんで?」
「生理になったの」
「そう……」
「知ってるでしょ?」
「うん、知ってる」
知ってはいるが、分かったようで分からない。ただ女の禁忌的イメージは持ってはいた。
「だからしばらくはだめなの」
昼間三度も射精している。勃起しているが、どうにも我慢出来ない状況ではない。彼女の家で、こうして抱き合っている息をひそめた緊張感が大きな興奮となっているのだ。

「こうしてていい?」
乳房に手を載せて軽く揉み上げた。
「やさしくしてね。きつくすると痛いから」
昼間に比べて大きく張っている気がした。
 舞子の手が股間をまさぐってくる。
「達也、したいでしょ?」
「うん……でも、そうでもない……」
「うそ。こんなに硬くなってる」
「だって、出来ないでしょ?」
「出してあげようか?」
 
 胸を揉みながら舞子の髪に顔を埋めていると記憶のどこかが蠢いた。
(前にこんなことがあった?……)
そんな突拍子もないことが浮かんできた。あり得ないことである。思いながら舞子に囁いた。
「前に、一緒に寝たことある?」
聞こえていないのか、返事がない。だが、ペニスを握った手の動きが止まったのは耳に届いていたからだろう。
「くっついて寝た気がするんだけど……」
「小さい時にあったんじゃない?」
「その時、触ったりとか……」
「知らないわ……」

 舞子の手が動き始め、若竹が喘ぎ出した。
「ちょっとだけ、触っていい?」
手を胸から下腹部へ滑らせた。
「だめよ」
「ちょっと」
言い終わらないうちに繁みに達した。
「だめだったら。生理の時はだめなの。汚れてるの」
押し殺した声に力が含まれていた。私は手首を掴まれてもなおもせがんだ。なぜそれほど執拗になったのか。
「洗ってないし。上のほうだけよ……」
舞子は両手で私の腕をしっかり掴むと制動しながら少しずつ下へずらしていった。
 中指の指頭が繁みから切れ目に入り、ねめりの域に達して、つい力が加わった。
「あ……」
図らずも敏感な突起を捏ねた。舞子はピクンと体を震わせて私の手を引っ張った。
「もうやめて、お願い」

 濡れた指を鼻先に持っていったのは特に意識したからではない。昂奮のまま舞子のニオイを嗅ぎたくなったのだ。
(!……あの臭い!……)
紛れもない。湿って、血生臭く、私を捉えて離さないあの『臭い』だ。なぜ?私は何度も指先を嗅いだ。つんと鼻腔をつく。神経が痺れて意識が遠のく心地になった。
「出そう……」
舞子は急いで起き上がるとティッシュを当てた。
「いいよ」
舞子の手が加減なく扱き立て、あっという間に噴き出した。力が徐々に抜けていった。
「舞子……」
「達也……」
薄れていく快感が線香花火のように火花となって散った。


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