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『清子と、赤い糸』
【幼馴染 官能小説】

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『清子と、赤い糸』-18


「こういう球も、あるんやなぁ」
 岡崎が教えてくれた、指を使わずにボールを握る変化球“パーム・ボール”を、ブルペンで試している清子。隣には、その岡崎がいて、捕手の小池も交えて、清子の新しい変化球について、やりとりをしていた。
「手首を固定するから、肘にかなり力が入る。投げすぎると、肘を痛めるから、気をつけろ」
「わかったよ、まーちゃん」
 言いながら、捕手の小池を相手に、その“パーム・ボール”を何度か試し投げする清子であった。
「チェンジアップみたいやな。途中で、フワッと沈むわ」
 これは、捕手・小池の感想である。緩い山なりの球かと思ったが、何球かに一度は、少し揺れながら沈む不可思議な変化をするものもあって、面白い球だと彼は思っている。
「おおきに、まーちゃん。ウチ、この“パーム・ボール”、がんばってものにしてみせるからな」
 指先を使わないで、普通のストレートと同じ腕の振りから放ることが出来るので、これは自分に合った変化球だと、清子は直感で思った。手のひらが大きいから、ボールの収まりも丁度良く、思った以上に投げやすさを感じていた。
「おー、戻って来たか。まっとったで」
「「「???」」」
 今日は休日なので、午前と午後に跨る練習のため、1時間という長めの休憩時間があった。それを利用したブルペンでの少しの練習を終えて、三人がベンチに戻ってきたときには、同僚たちがなにやら白い紙をやりとりながら、賑やかに時間を過ごしていた。
「なにしとるん?」
「アンケートや、アンケート。ウチらの周りの女子で、誰が一番か決める“女子ランキング”をやっとるんや」
「それはまた……」
 清子は呆れたような顔をしていた。中学生にもなれば、思春期真っ只中に突入するので、そういった話題はよくあることだが、女子の目からすれば他愛もないことに映る。
「ほれ、三人とも書きや。武士の情けで、無記名でええから」
 そして、自分にもその紙を渡されたということは、最初から自分は“女子”の範疇外になっているのがはっきりわかって、清子は、こめかみを多少震わせつつ、苦笑いを止められなかった。
(まーちゃんは、誰の名前を書くんかな……)
 まさか、自分の名前はないやろうな、と、願望を抱きながらそれを信じられず、清子は例の“胸の痛み”を感じてしまった。
「ほんじゃ、集計してくで」
「「おー」」
 奇妙な盛り上がりが、ベンチの中で沸き起こる。他愛のないことではあるが、これもまたチームの結束を生み出すものだと思えば、悪くないのかもしれないと、清子は溜息混じりに、もう一度苦笑してみせた。
 開票されて、集計されている名前は、当然ながら“Wマドンナ”で界隈でも有名な、沙代と頼子の二人に集中していた。
「星野晴子?」
「“二軍”の監督さんの、奥さんや。優しい人やで」
「二票あるな」
「……へっ?」
 清子は、自分が書いた名前を読み上げられた時に、“星野晴子って、誰のこと?”という雰囲気が生まれたので、先にそう伝えたのだが、まさか自分と同じ名前を書く誰かがいたとは思わなかった。
「………」
 ちなみにそれを書いたのは、小池君である。身近な年上の女性に憧れる気持ちは、男子であれば必ず抱くものであろう。…そうではないかな、男子諸君!!
 …話が逸れた。


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