美少女初摘み(1)-2
気づかれてはならない。俺は距離を保ちながら後をつけていった。駅まで一緒だった数人の友人とは改札を入ってから手を振って別れた。
歩き始めて立ち止まり、心持ち俯き加減になった。後姿の様子から携帯を取り出したようだ。間もなくふたたび歩き出し、ホームの階段をおりていく。
(おかしい…)
そう思ったのは塾のある駅とは逆方向だったからである。どこかに用事があるのか。それとも今日は休みなのか。
沙織は車内で一心に携帯を操作していた。ほとんど周りに目を向けない。俺はドアの間隔分置いていた距離を少しずつ縮めていった。
前髪がつぶらな瞳のすぐ上までかかっている。夏服のブラウスが張り出して、息づく乳房の温かさが伝わってくるようだ。
(ああ…柔らかいだろうな…)
思わず吐息が洩れた。
降りたのは渋谷である。
(何かある…)と直感した。平然とした行動ではあるが、塾とも自宅とも方向ちがいの場所である。俺は期待と胸騒ぎを覚えていた。
改札を出た沙織はまた携帯を取り出し、今度は話し始めた。そして数分後、別の高校の女生徒二人と合流した。にこにこ笑って何か話しているが内容が聞こえる距離ではない。
三人が入っていったのは褠内のトイレである。時間にして二十分ほどだったろうか。俺は危うく沙織を見失うところだった。出てきた三人はそれぞれ流行のカジュアルウエアに身をつつみ、おまけにかなり濃い化粧までしていたのである。気づいたのは抱えたカバンが目に留ったからだ。
彼女たちはカバンと紙袋をコインロッカーに入れると繁華街の方へ歩き出した。紙袋には制服が入っているのだろう。
俺はそれから二時間近く尾行を続けてから引き上げた。三人はいかがわしい場所に入ることもなく、付きまとう怪しげな男たちを相手にもせず、ただぶらぶらと店を見て回ったり、アイスクリームを食べたりと他愛ない時間を楽しんでいるようだった。
(息抜きをしているということか……)
あの後トイレで着替えて化粧を落とし、何食わぬ顔で帰宅して『塾の復習』をするのだろう。親の目が厳しいので服は友達に預けてあるのかもしれない。いまどきの女子高生には珍しいことではない。
それより、つけ入る隙を見つけたことで俺はほくそ笑んだ。悪いことをしてはいないが親を欺いたことは十分ネタになる。
(さて、これをどう使うかだ……)
俺は早速計画を練った。計画といっても複雑なものではない。弱みを握ったのだから余計な手段はいらない。切り札をちらつかせて喫茶店かどこかに誘いだせば後は薬を飲ませるだけだ。その時の話の筋道を考えた。