再会-4
男の下心では無く、非常事態だった。
「この雪だと、動けなくなるのも、時間の問題だね。泊まる所、探そうか?そこのコンビニに行ってみる?」
由佳は、さっき通り過ぎたコンビニを指差した。拓也は車をUターンさせ、コンビニの駐車場に車を止めた。携帯電話で宿を探す。時刻は夜の8時になろうとしていた。
「もしもし、今日、大人2人なんですけど...。あっ、そうですか。」
もう、何件、電話しただろう。世の多くの人が、拓也よりも早く、車に乗ることを断念し、宿を予約したようだ。拓也が次の宿を探す。
「拓也くん。私、別にあそこでも大丈夫だよ」
由佳が指差した方を見る。[ホテル レモン]
ラブホテルの看板だった。「そうだね。このままだと、雪がやむまで、車に閉じ込められちゃうね。腹へったー!ご飯とお酒でも買って行こうか?」
拓也は、運転の疲労からの開放感と、安堵感から、テンションが上がっていた。それと、今日、もしかしたら...。
「拓也くん。何考えてるの?」
由佳が茶々を入れた。二人は買い物を済ませ、ホテルの看板の指示に従って車を走らせた。
二人はホテルに到着した。「空」のランプが付いている。かなり古い建物だ。「どうする?ここでいい?」
「うん」
この雪では、別のホテルへ無事にたどり着く保証が無いことを、お互い分かっていた。かなり古いホテルではあったが、空いているのは1室だけだった。拓也はカギを受け取り、ドアを開ける。大きなベットがあり、その周りの壁は鏡ばりになっている。
「なんかスゴイね」
由佳は部屋を見渡している。
「冷めない内に食べようか」
二人は買ってきた缶ビールで乾杯した。
拓也は一生懸命に、その場を盛り上げ、由佳に酒を注いだ。アルコールもビールから日本酒に代わった。今日、一緒に泊まることになったのは、アクシデントのためだ。しかし、拓也が長い間思いを寄せ、時には、想像を駆り立てて、オナニーの対象としていた由佳と、今一緒にラブホテルにいる。拓也は今日見た、由佳のやらしい水着姿を思い出していた。もう、オナニーではない。もしかしたら、実物の由佳の裸体を目の前に、その身体を使って射精することが、出来るかもしれない。拓也は、男の下心を押さえ切れなかった。もちろん、皆が何の目的で、ここに来ているのか、そして、若い男女が一夜を共にするということの意味を、お互いに理解していた。しかし、二人はお互いに、その話題には触れなかった。 拓也は、由佳にどんどん酒を促した。由佳の顔が、ほんのりと紅くなっている。
「由佳ちゃん、お風呂先にどうぞ」
「拓也くん、先に入って。ちょっと飲み過ぎたみたい。」
拓也は、飲んだ勢いで、一緒に入ろうと誘いたかったが、断られれば、由佳とSEXしたいという望みが、ここで終わってしまうのが怖く、言葉にすることが出来なかった。
「それじゃ、お先ね」
拓也は独りで風呂に向かった。
事故で死んだ由佳の元カレ(徹)の魂は、さ迷っていた。真っ暗闇で何も無い世界。天国なのか地獄なのか、そもそも、そんなもの自体ないのか?どれ位の時が経ったのかも分からない。ただ、徹は由佳に会いたかった。会って、きちんと「さよなら」を言いたかった。そして、由佳が自分の身体しか知らない内に、もう一度、身体を重ね合わせたかった。徹の魂は、由佳を思い続けていた。
「オイッ」
確かに声がした。真っ暗闇の世界。何も見えない。自分の死後、初めて耳に入る音だった。
「オイッ。お前の望み叶えてやってもいいぞ」
「本当か?」
「あぁ。条件さえ、守ってもらえればな」
徹は条件を聞いた。
「1.俺にも、その女を味あわせろ。心配するな。俺のぺ○スをマ○コに入れたりしない。お前の希望通り、お前以外の身体を知らない状態で、やらせてやる。 2.俺達に肉体は無い。人間の身体に乗り移るしかないが、俺は独りでは出来ない。だから、お前と一緒に、同じ身体に乗り移るしかない。乗り移った身体の優先権は俺だ。お前は、俺が許した時だけしか、自分の意思で身体を動かすことは出来ない。
3.由佳とのSEXが終わるまで、自分が徹であることを告げてはならない。」
徹は、その条件を受け入れた。また、真っ暗闇で、何も聞こえない世界に戻った。
拓也が、備え付けのバスローブを着て、風呂から出てきた。