熱い会話へ-3
「なるほど、そうですね、確かに悠太郎さんの言われるように、
セックスは、その回数の多い少ないで論じるものではないということしょうか、
それについてどうでしょう、ひかるさんの意見は?」
ここで司会をしている信一郎は、女優のひかるを指名した。
(彼女の本質を暴くのはまだ早い。
今は、女優としてのひかるを演じさせればいい)
彼は心の中で呟いた。
そろそろこの辺で、
今日のゲストとしてのひかるに発言をさせ
この場の流れを盛りあがらせようと思ったようである。
その時のひかるの発言を注意深く観察しようという彼の執拗な思いなのだ。
ひかるは、意識しながらぐるりと自分を見つめる皆の顔をみながら
ゆっくりと口を開いた。
しかし、頭の中では、あの残酷な信一郎がどう豹変をするのか、
それを思うだけで身震いする気がするのだ。
今は、一応、女優として、
タレントとしてこの芸能界でそれなりに知られるようになった。
それは、ここにいる信一郎によるものである。
彼に出会う前は、普通の少しだけ器量のよいだけの女だった。
家族思いの優しい女だった。
今は、ひかるは家族とは繋がりがない。
というよりも、あの優しい母からも愛想を尽かされている。
映画での激しいセックス、週刊誌や雑誌で囁かれる数々のゴシップ。
有名人という名と引き替えに与えられた悲しみ。
それは自ら招いた結果だが、それも信一郎の思惑があるのだ。
その彼と出会い、見いだされて今この地位が補償されている。
どう足掻いても、もう今は引き返せない自分。
それらの代償も少なくない。
自分の心も身体も、その信一郎に束縛されているのだ。
激しいセックスの映画の撮影も彼の指示によるものであり、
ひかる自身がそれを選択出来る自由はないのだ。
男優と本番でのセックスをして、マンションに戻った後には、
信一郎は必ずひかるを抱いた。
「どう感じたか、本当に逝けたのか」と執拗に聞くのだ。
そうした後は、激しい嵐がひかるを襲い、心も身体もズタズタになる。
女優でないときは、彼の女であり
彼の為に尽くすだけの女なのだ。
この身体は、乳房も、膣も、口さえも彼の(モノ)であり、
心まで従わされている女、
自分の全てを皆の前に晒して
後で、たっぷりと楽しもうということもひかるは分かっていた。
その(ひかる)という名前さえ信一郎が名付けたものである。
彼と居るときだけは、本当の名前の(沙織)として彼に仕えている。
彼から与えられた高級マンションは、
彼女にとっては囚われの部屋でしかない。
幾度と無く、その白い部屋で涙を流したことか。