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女嫌いな俺
【コメディ その他小説】

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佐伯との約束-2

木下は2・3回読み直していたが、しきりに首を傾げた。
「おかしいなあ。 別に変なことは書いてないよな。それより、俺の気持ちをすっきり纏めて書いてくれてる」
「だろう? 佐伯はどうして腹が立ったのかお前に言ったのか?」
「それがどこがどうとは言わないんだ。言わないんだけれど、自分のことを馬鹿にされたような気持ちだとは言っていた」
「具体性に欠けるなあ。まあ、それでもあいつの返事は聞いてきたんだろう?」
「いや……それは聞いて来なかった。しまった。それを聞くのを忘れた。でも俺は代筆は誰が書いたかは言わなかったぞ。頼む! 返事を聞いてきてくれ」
俺は仕方なしに佐伯を呼び出した。
「おい、お前。木下に返事をしてやれよ。まあ、代わりに俺が聞いても構わないけど」
佐伯佳美は俺を睨みながら長い髪を手で撫で上げた。
「天野君、手紙を書いたのあなたでしょう?」
「知らないよ。俺はただの運び屋に過ぎない」
すると佐伯は手紙を取り出して文を指差しながら言った。
「あなたしかいないでしょ。こんな書き方するの。どういう訳か好きになったって何?好きになるのがおかしいって言ってるみたいだし」
「それは考えすぎだろう。好きになるのに理由はないんだから、訳もなく好きなんだろうさ」
佐伯はまた別の場所を指差して読み上げた。
「返事を長引かせず早めにって何? 私がいつもそうしてるみたいじゃない」
「その通りの気持ちなんだろう? それにお前いつも長引かせているみたいじゃないか。本当のこと言われて腹が立つのかよ」
佐伯はそれでも引き下がらなかった。そのすぐ後の文にも文句をつけてきた。
「重症になる前に熱病から早めに醒めるとかなんとか。これじゃあ、私が病気を引き起こす病原菌か、悪夢そのものみたいじゃないの」
「どうしてお前はひねくれているんだ。ラブレターってみんな同じことを書かなきゃいけないのか? そりゃあお前はたくさんの男から貰ってるからラブレターの評論家みたいなものだろうけど、人には個性ってもんがあるだろうが」
「ま……また言った。ここにも書いてあるわね。沢山の男に言い寄られてとかなんとか。これはあなたの書き方よ、絶対。その後の適当に流さずにというのもそう。私がそういう女だろうと決め付けているような、悪意に満ちているわ」
「佐伯、お前がそういう悪意を持っているから鏡に映した様にそう感じてしまうんじゃないのか? ああ、面倒くさい。要するに木下を断るのか? 断るのなら断るとさっさと言えよ。もったいぶらないで」
「まだわからないわよ。天野君の変な手紙に邪魔されて木下君に対する気持ちが整理されてないから」
「おいおい。そんなに悩むことかよ。好きなら好き、なんとも思ってないならそういえばすむことだろう。なぜ勿体つける?」
「わかったわ。明日まで待って。で、天野君が来て。ちゃんと言うから」
「お……おう。忘れるなよ。期限を守れよ」
なんだか俺はサラ金の取立て屋みたいな気分になってしまった。もちろんやったことはないけど。
 


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