投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

女嫌いな俺
【コメディ その他小説】

女嫌いな俺の最初へ 女嫌いな俺 2 女嫌いな俺 4 女嫌いな俺の最後へ

佐伯との約束-1

俺は佐伯佳美が一人で音楽室でピアノを弾いているときを狙って部屋に入って行った。
「ちょっと良いか?」
「なに、天野君? 今ピアノを弾いているとこなんだけど」
「そんなの、見れば分かる。佐伯、お前木下知ってるか?」
「知ってるけど……それが?」
「これ、お前に手紙だ。渡したから必ず読め」
「なんで、天野君が? 木下君が自分で渡せばいいじゃないの? そんなの変じゃない」
「ああ、変だよ、木下は。特にこのことに関してはな。だってお前を好きになることだけでもそれが分かるってもんだろう」
「なに? それどういう意味よ」
「俺がお前のことどう思おうとそれは今は関係ない。今は木下の話をしている。良いか? 確かに渡したから後の処置はお前が判断して人の道に外れないように対処してくれ」
「なんで、天野君にそんなこと言われなきゃならないの?」
「ああ、気にしないでくれ、俺のことは。じゃあな」
俺はこれ以上面倒臭いやり取りをしたくなかった。腐った果物とは長く話したくないのだ。
俺は次の休み時間になってから木下に会いに行った。あいつは違うクラスだからそういう点手間がかかる。俺はラブレターのコピーを持ってあいつを呼び出した。
木下はまるで俺がもう佐伯から返事を貰って来たのを聞くかのように、緊張した顔をしていた。まるで怒っているような顔をしているので俺はおかしくなった。もしかして死刑の宣告をこれから受ける気持ちでいるのだろうか?
「まだこれからなんだ。実は……」
俺はラブレターのコピーをポケットから取り出して説明しようとした。
「どうしてなんだ? お前はいったいなにをしたんだ?」
「はあ?」
「佐伯さんが前の休み時間に俺を呼び出して、ものすごい剣幕で怒っていた。訳が分からず、理由を聞いたら俺がラブレターを書いたことになっていて、その内容に腹を立てているらしいんだ。だから俺は……俺は誤解を解こうと、それは俺が書いたものじゃないって」
「ええっ!? い……言ったのか?」
それにしても佐伯があの後すぐ手紙を読んで木下を呼び出したとは知らなかった。あいつは普通1週間はほったらかしにしておいて、相手が返事を聞きたくて焦れて会いに行くと『ごめんなさい』とかなんとか言って良い人の振りをするのが定番だって聞いていたんだが……。なんで……なんで今回に限り速攻なんだ?
「お前は一体どんな手紙を書いたんだ?どうしてあの人を怒らせたんだ?」
俺はコピーを見せた。何度も自分で読み返したから特に問題点はない筈だと確信している。

佐伯佳美さん、俺はどういう訳か君のことが好きになってしまいました。
これは事実です。俺は君のことを考えると胸が苦しくなります。だからもし君と恋人同士にになれたら、この苦しみが消えると思います。
でも、君は俺の事をどう思っているでしょうか? もし俺のことをなんとも思っていないなら、正直に教えて下さい。
決して返事を長引かせずに早めに教えて下さい。そうされるのは確かに俺としては苦しいですが、重症になる前に熱病から早めに醒めることができます。
君は沢山の男から言い寄られていて、俺はそのうちの1人に過ぎないかもしれないけれど、適当に流さずに気持ちを率直に伝えてほしいです。
もし万が一、俺と付き合ってくれるなら、俺はとっても嬉しいです。
でも決して無理しないで下さい。無理しないとは思うけれど、とにかく返事待っています。
            
          3組 木下圭吾より

 


女嫌いな俺の最初へ 女嫌いな俺 2 女嫌いな俺 4 女嫌いな俺の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前