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中道深夜探偵事務所へようこそ
【フェチ/マニア 官能小説】

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財物で買えないもの-2

エレベーターのドアが開いた。

中から黒髪のショートカットの女性が入ってくる。年齢は20代半ばだろうか、服装も黒のジャケットで統一されている。肌は日焼けしているが中々の美形だ。
「こ、ここは」
女性は予想だにしなかった光景に驚いているようだ。無理もない。コンビニの真下がラウンジになっているのだから。しかも、ここのほうがずっと広い。

「中道深夜探偵事務所へようこそ。執事の坂井でございます。以後お見知りおきを。おや、貴女はいつぞやの美しいお嬢さん」
「知っているのか?」
女性の正面に一礼した坂井の横から中道が挟んだ。
女性はきょとんとしていたが、少し間を置いてから何かを思い出したかのように表情を強張らせた。彼女は坂井のほうを見ている。
「あなたは、広場でビラ配りをされていた…」
「左様で。覚えて下さっていて光栄です」
女性の顔が曇った。
横から声が入る。
「失礼しました。はじめまして、代表の中道でございます。さあこちらへ」
名刺を差し出した中道に「えっ、こんな坊やが代表なの?」とでも言いたそうに彼女は驚く。中道はそんなことなどお構いなく、扉の向こう側「中道深夜探偵事務所」まで誘導する。

扉が開いた。

女性はその室内を見た瞬間、更に驚愕した。まるで高級ホテルの一室を思わせるような豪奢な館内。
「こちらです」
誘導され、応接場まで移動して腰を下ろす女性。

「楽になさって下さい」
中道は女性と正対するように腰を下ろす。
「お飲物は何になさいますか?」
坂井がウェイターのように注文を取りにくる。
「えっ。飲み物ですか」
「勿論サービスですよ」
「では、コーヒーをお願いします」
「同じだ」
「はい、かしこまりました」と言って坂井がラウンジへ引き上げる。
「坂井は滅多に注文を取りに来ないのですがねえ。ひょっとしたら、執事の分際でお客様に好感を持ってしまったのかも知れません」
「そんなぁ、好感だなんて。いいえ、私はそんな立派な人間じゃありません」
女性は何か後ろめたい表情をしていたが、中道は相変わらず能天気な笑顔を作っている。

「そうですね、今回に限っては、わたくしから何も聞かないでおきましょう」
「はぁ?」
「多分、貴女は何でこんな所に来てしまったのか、混乱されているようです」
女性の眉間にシワが寄る。
「私、何も言ってないのに、何でそんなこと分かるんですか。一体何なのよぅ」
中道はそれでも能天気に見つめている。
「用があったから来たに決まっているじゃないのよ」
「では、どのようなご用向きで…」
「だから、それは…」
女性は言い出せなかった。

「お待たせしました。どうぞごゆっくり」
坂井がコーヒーをテーブルに置いて一礼した。
「さあ、冷めないうちに一緒に飲みましょう」
「ごめんなさい。急に取り乱してしまって」
「ミルクと砂糖は?」
「いえ、ブラックで」
中道はコーヒーを静かにすする。女性も釣られるようにすすった。


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