ゲレンデでの出逢い-4
ホテル・ホワイトラインズ白馬…
麻衣子24歳
私は露天風呂に浸かっている。お湯がいつも以上に熱く感じるわ。スキーで芯まで冷えていたのね。ああ、可哀想な私のカラダ。でも、もう大丈夫だわ。段々とお湯が染みてくるからよ。
かなり暖まったところで私はシャワーを浴びた。長い黒髪に付いていた泥や埃が落ちる。ただ、何だかすっきりしない。落ち着かないのよ。
露天風呂に入れば少しは気持ちが楽になると思ったのに、これじゃ期待外れだわ。私はまた暫く湯船に浸かってから上がった。
部屋に戻ったら美紀が待っていた。
「アンタおらんかったから明日の予定伝えとくわ」
「予定って?」
「獲物が見つかったんよ」
「獲物って…まさか、ここでやるつもり?」
「そうみたいやで。そやから、忘れんように」
レイプするのね。
「ってリーダーからの伝言やから頼むわ」
聡美が?
「それにしても、帰ってきてからのアンタちょっとおかしいで」
「うん、そうかも。ちょっと疲れたかなって。ハハ、ハハハ(…まずい)」
「疲れたら、はよ寝えや」
「うん、わかった」
翌日…
彼に逢えなかったか…
すると、思いも寄らないところから電話が入る。
『もしもし、麻衣子さんですか?』
「えっ?その声…明良さん?」
『はっはっはっ。やっぱり麻衣子さんだったんだ』
ああ明良さん…
『実は、今日そちらのホテルの人と待ち合わせしているんですよ』
「えっ、そうなんですか」
へぇ〜、誰なんだろう。
『僕の連れが、そちらの宿にいる女の子4人組とコンパの約束してるらしいから、何とか人数分を用意しているんです』
まさか、美紀が言ってた獲物って。
「明良さんも参加されるの?」
『正直、僕は気が進まないですけどね。今回は仕方ないかなぁなんて』
「ダメ。行っちゃダメ」
『えぇ?何で?』
「ダメ、絶対に行っちゃダメ」
『だから何でダメなの?』
「言えない…でも行かないで。お願い…私を信じて」
『…。何だか訳ありだね。わかった、連れには上手く断っておくよ』
「そう…ああ良かったぁ」
『ところで麻衣子さんの予定は?』
私は昨日に続いて明良さんと逢うことになった。
ゲレンデにて…
「実は私。スキー、始めたばかりなんです」
「うん、そうだよね」
「えっ、知ってたんですか?」
「長いこと滑っていると色々と解ってしまうんだ」
「ホント恥ずかしいですわ」
「それでも基本さえ覚えれば、滑れるようになるよ」
「でもぉ、昨日仲間から教えて貰ったのに全然で」
「一緒にやってみようよ」
えっ、私が明良さんと一緒に滑るの?
滑りたいわ。一緒に滑りたいわよぉ。
「…はい、是非お願いします!」
明良さんのコーチは、それは見事なものだった。自分でも信じられないくらい上達して行く。そして、明良さんと並んで銀世界の風を切っている。何て素敵なのかしら。来て良かった。これは神様からのプレゼントだわ。
そして別れ際…
「電話します」
「僕も電話するよ」