THANK YOU!!-5
瑞稀はショートパンツの後ろポケットに入れていたスライド式のシルバーのケータイを取り出した。もう既に日本の家に戻って家族から歓迎をうけていて、荷物を置いてそのままこの場所に来たので、持っているモノといえばケータイのみ。
ケータイを開くと、メールが一件届いていた。
言わずもがな、先ほど電話をした親友からだった。
【瑞稀ー。明後日、11時に迎えに行くから待っててねー。あ、何かご飯のリクエストあったら聞くよー(*´∀`)ノ瑞稀に会えるの、凄く楽しみにしてるね!】
本文を見た瞬間、強ばっていた瑞稀の顔が緩んだ。
そのメールに返信を送る文章を作りながら、瑞稀は空港での電話を思い出した。
*****
「・・・着いちゃった・・。日本」
ため息をつきながら、仕方なしに自分の最寄駅まで行くリムジンバスのバス停まで大きめのトランクケースを引き摺りながら向かった。
しかし、時刻表を見ると一時間も待たなくてはならなかった。
どこかで、何か食べようかと思ったが、あいにくお腹は空いていなかった為にベンチに座っていることにした。
「・・・懐かしいなー。」
5年前に、自分が見た景色と全く変わってないことに安心感があった瑞稀。
自分のいない内に、知ってるモノがガラリと変わっているということは、結構ショックなのだ。
そのショックを味わなくて良かったと、思っていた。
「それにしても・・一週間か。長いな・・。ボスもいきなり過ぎる・・。」
忘れ物を見つけてこいといったボスの言葉を聞いた直後から考えていたが、何を日本に忘れてきたというのだろうか。
まあ、もしかしなくても、一つしか思い当たる事なんかないのだが。
だが、そのことに気づいていないのが主人公。瑞稀。
「あ。・・・恵梨に電話しとかないと・・。言わないと怒るしな・・」
ケータイを取り出して、時間を確認していた瑞稀はふと思い出した。
最後に会ったとき、一時帰国したときは絶対に連絡を入れろと強制された。
一度躊躇ったが、恵梨ほど怒らせると怖い人は居ないので、仕方なしに嫌いな電話をかけることにした。
コール音が二回したと、思ったらすぐに出てくれた。
「あー、恵r『瑞稀!?』・・うるさいよ・・耳が・・」(ここから『』は電話口を表す)
『だって5年も連絡してくれなかったじゃん!!遅いよ!』
「うん。ゴメン・・忙しくて」
『・・・うん、分かってる。電話してくれて、ありがとう。瑞稀は、今日休み?』
「いや・・なんていうか・・うん、そんな感じ」
『何でそんな曖昧なの・・。で、暇だから電話?』
「いや・・暇っていうか・・リムジンバス待ってるから・・まあ、暇か。てか、帰国したら絶対電話しろって言ったの恵梨じゃん」
『・・・え・・?ちょ、ちょっと、まって。今、瑞稀どこにいんの!?』
「え?だから、日本。東京。成田空港」
『帰ってきたの!?あと、瑞稀、成田は東京じゃない!』
「あ、東京じゃないんだ。へえー。・・ってわけで、とりあえず帰ってきたから一番に電話した。あとでお兄ちゃんにも電話しようとは思ってるけど。」
『・・・そっか・・。・・お帰り。』
「・・ただいま。」