投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

THANK YOU!!の最初へ THANK YOU!! 153 THANK YOU!! 155 THANK YOU!!の最後へ

THANK YOU!!-4


中岡先生が、校舎に戻ったことを確認した瑞稀はもう一度桜の木を見上げた。
小学生のころから毎日見てきた木。ここに登って、窪みに座ったこともある。
そのたびに、自分の心が安まっていく気がして好きだった。
だが、今、瑞稀の心は安まることは無かった。
悲しげな表情をした瑞稀は、一日前の事を思い返した。

*****

『ミズキ!』(ここから『』は英語)
『・・・?なに?ケビン、それにミナーアまで』
『ボスが呼んでるわ』
『ボスが?なんだろ。』
『行ってみればわかるよ。行ってらっしゃい』
『?・・まあ、いいや。いってきます』

《コンコン》

『ボス。瑞稀です』
『おお。瑞稀。入ってくれ』
『失礼します。それで、ボス。何の用ですか?』
『おいおい、ボスはないだろう。せめてリーダーと言ってくれよ』
『クスッ・・。皆、ボスって呼んでますし、このオーケストラのボスじゃないですか』
『まあ、そうなるのかもしれないが・・・。マフィアじゃないんだから』
『いいじゃないですか。それで・・』
『ああ。実はね、君に、次の公演のソロパートを頼みたいんだ。』
『え・・?ちょ、ちょっと待ってください!次の公演って3週間後じゃないですか!』
『あぁ・・急ですまないと思うが・・。もう、大々的に世界へ名を出していいと思っている』
『・・・』
『勿論、他のメンバーにも話してある。皆、大賛成してくれている。』
『・・でも・・私には・・そんな才能』
『いや、君の成長や才能はここにきてまた飛躍的に上がった。ソロ活動しても問題ないし、もっと上のオーケストラに移っても問題ないくらいだ』
『・・・あ、ありがとうございます』
『君の演奏は、日本で聞いた時よりも好きになった。素晴らしかった。・・だが』
『・・・?』
『日本で聞いたときとは、違う・・最近ようやく分かってね』
『・・・・・違う・・?』
『君は・・日本に忘れ物をしてきたようだ。明日から休暇を一週間あげよう。その間に日本へ行って来なさい』
『え・・!?』
『チケットも、帰りの分もまとめて取ってある。来週には必ず帰ってきて欲しい。』
『・・でも・・もう、日本には・・』
『ミズキ。今の君の演奏には、大事なモノが欠けている。演奏家にとって、とっても大切なモノだ。それを、取り戻してきて欲しい。そこでやっと君は一人前のプロのトランペット演奏家だ』
『・・・・・・・・』


*****

最後のボスの言葉が、瑞稀の頭にこびり付いていて、離れなかった。
結局、断ることが出来ずに、すぐさま家に帰って準備をして飛行機に乗ってしまった。
そして・・5年振りに帰国した。
本当なら、誰にも言う気は無かったが・・空港を出て、リムジンバスを待っている間に一人の親友に連絡を取った。
日本に帰ってきたのなら、必ず何があっても電話。最低でもメールをするようにと強制されていた。



THANK YOU!!の最初へ THANK YOU!! 153 THANK YOU!! 155 THANK YOU!!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前