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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-6


ひとしきり、近況報告をお互い済ませた。
恵梨は、大学に通っていて心理学を勉強中。行く行くは、カウンセラーになりたいらしい。
瑞稀は初めて親友の夢を聞いたが、恵梨なら大丈夫だろうと思った。

『瑞稀。日本にはどれくらい居れるの?』
「ん?一応、一週間。三週間後に、公演あるから・・」
『そっか。でもそんな時期に休みなんて・・珍しいね』
「忘れ物を取り戻してこいって言われたからね・・。よく分からないけど」
『・・・あ・・』
「?どうしたの?」
『ううん。なんでもない。なら、三日間くらいウチん家泊まりに来なよ。そのまま空港まで送るし。てか、泊まれ』
「なんで命令型なの・・。でも、いきなり迷惑だよ。」
『まさか!!マザーも泊まれってさっきから連呼してるよ。車で迎え行くとも』
「マジか。・・じゃあ、お言葉に甘えようかな。お願いします」
『了解!じゃあ、詳しい事はメールすんね!もうすぐバスくるだろうし』
「うん、タイミングよく今来たよ。」
『アハハ!じゃあ、あとでねー!』
「うん。」

電話を切った瑞稀は、バスを降りてきた運転手にトランクケースを預けてチケットを見せてバスに乗った。
久々に見る日本の景色を堪能したかったが、長時間の飛行機で疲れていたのか、バスが発車する前に眠りについてしまった。それは、最寄り駅に着く直前まで熟睡する眠りだった。
ちなみに寝ている間、同じバスに乗り込んだ何人かの人たちから瑞稀を見て、有名な演奏家が乗っているとちょっとしたパニックになったが。

電話を切った恵梨は、母親と瑞稀の事を話しながら、瑞稀の言葉を思い出した。

“忘れ物を取り戻してこいって言われたからね”

忘れ物。
多分・・いや、絶対。あの人のことだろう。
瑞稀は気づいていないようだけど・・間違いはないと想う。
今の、瑞稀に必要なのは・・。

そう考えた恵梨は、未だに握り締めたままのケータイを持ち直した。
そして、キーを打ち込んだ。

*****

メールの返信が終わった瑞稀は、ケータイをポケットにしまった。
その時、風が吹いて瑞稀の髪を揺らす。
桜の花びらと一緒に・・。

《キィ・・》

何かが、開くような音がした。
瑞稀はなんだろうと思って視線をずらした。その先には、プールがある。
恐らく、扉の役割を果たしている柵が開いて風に揺れて音を立てたんだろう。
まるで、瑞稀を誘うかのように。
瑞稀は“行ってはならない”と本能的に感じた・・。



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