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サプライズ・カウンター
【その他 官能小説】

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サプライズ・カウンター-3

でも、イヤな顔ひとつせずこちらの申し出を受け入れてくれるし、他のお客様を優先して考えてくれる皆さんに、いつも感謝している。
『ほらっ!店の客を放っとくなよ。俺等はイイから。』
私は二度三度、頭を下げてから、中に戻った。

―間もなく閉店時間。イベントの類がない限り、4時で閉店になる。駅まで歩いて10分ほどの立地なので、お客様が最後まで飲んでいても、始発で帰れる。
美樹ちゃんと二人で、店仕舞いをしながらの会話。
『私、また迷惑かけちゃった…』
『和哉さん達ですか?』
『そう。色々と気を遣ってくれるのってとっても有り難いんだけど…』
『逆にこっちも気を遣いません?』
黙って頷く。決してイヤなワケではない。むしろ助かっている。だがそれが重荷になる。
『私さぁ、お世話になりっぱなしだから。何かしてあげられないかな…?』
『じゃ、デートにでも誘ってみたらどうですか?』
『えぇっっっ!?』
グラスを洗う手が止まった。彼女は時々、サラッと爆弾発言をする。
『デートぉ…?』
『ちょっと大袈裟な言い方しましたけど、食事に誘うとか。そんなレベルですよ。』
私はかなり奥手な方だ。それなりに男性と付き合った事はあるが、いつも緊張でガチガチになる。ただでさえドジなのに、そこから更にグレードアップして考えられない失敗をした事もある。
『でもリンさん。三人全員となら、そんな意識しなくて済むんじゃないですか?』
《なるほど。それならイイかも。》
そう考えたら気がラクになった。まぁ、彼女の意見は参考程度にして、自分で出来る事を探す様にすればイイ。
『でも、皆さんが揃うのってココぐらいですよね?ナオさんなら頻繁に来るけど。』
《あ、確かに…》
それぞれ仕事や都合がある。私の休みだって、その時に重なる保障はない。考えれば考えるほどプレッシャーになる。
『美樹ちゃん…私、自分で何か考えてみる。ココでも出来る事もあると思うし。』
『ふ〜ん…』
彼女から素っ気ない返事が返ってきた。自分の発案が却下されたから、その時はそう思った。

―そして、後片付けが終わり美樹ちゃんの終業時間となった。
『お疲れさまでしたっ!』
『じゃ、また明日ねっ!』
静かになった店内。缶ビールを開け、カウンターに座る私。彼女の言葉が頭に残っていた。
《食事かぁ…》
焦る事はない。そう思いながらビールを飲み干し、帰り支度をする。店内の照明を完全に落とす。私の長い一日が終わった。

―それから二週間ほど経った。
その間、三人は店に顔を出してない。和哉さんと明人さんは、会社を興してから月イチぐらいでしか来れないみたいだ。
…カランカランッ!
『いらっしゃいませっ!』
一人の女性客〈真琴〉。スラリと背が高く、ツヤのある長い黒髪。いかにもキャリアウーマンって感じの服装と雰囲気。女の私が見とれてしまう程の美人。
【完璧】。そんな単語が頭の中に浮かんだ。
『ひとりでも大丈夫かしら?』
『お席、カウンターになりますけど、宜しいでしょうか?』
少し緊張しながら答えた。それに対して、微笑んで頷く彼女。入り口から一番離れた席に座る。物腰も非常に柔らかい。
『あのぉ、お飲物は?』
『生ビール、グラスで頂ける?』
彼女の前にコースターを出し、グラスを置く。静かにグラスを傾ける彼女。落ち着いた感じがするしかし、それと同時に強烈な存在感がある。
『お客様、今日が初めての方ですよね?このお店の事はどこでお知りになられたんですか?』
いきなり美樹ちゃんが話し掛ける。どんな時でも物怖じしない性格。私から見たら、かなり羨ましい。
『知人からの紹介なの。近くまで来たから、ちょっと伺ってみたのよ。』
微笑みながら答えを返す。はきはきとした、それでいて丁寧な話し方。ある種、独特の空気をまとった感がある。
『リンちゃ〜ん、ビールちょうだいっ!』
テーブル席からの声で現実に戻る。あまりにも特殊、いや異質な環境に我を忘れていた。
『はっ、は〜いっ!少々、お待ち下さいっ!』
カウンターを気にしながらビールを注ぐ。その後も、他のお客様のオーダーを取りながらカウンターの彼女に視線が行く。

―結局、彼女は日付が変わる寸前までいた。店を出る時まで、あの雰囲気をまとったままだった…

―次の日も、また次の日も彼女は来た。決まって9時頃に店に入り、12時前まで飲んでいく。途中、他愛のない会話とかは出来たがそれ以外は何も聞けなかった。しかし、その疑問の答えが分かる時が来た。


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