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サプライズ・カウンター
【その他 官能小説】

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サプライズ・カウンター-2

『その件、色々と考えたんやけどな…前も言うた通り。俺には向いてへん、それだけや。その代わりと言っちゃ何やけど、取引先を紹介したやろ?』
『あぁ、それのおかげてウチも軌道に乗ったからな。確かに結果オーライだけど、本音は…』
『これ以上、言わんでエエわ。今、そないな話したくて飲んどんのとちゃうんやから。』
ポテトを揚げながら、枝豆を解凍する私。
疑問だった。非常に仲のイイ三人。和哉さんと明人さんが会社を興す際、なぜナオさんだけが賛同しなかったのか…
そうこうしているウチにポテトがイイ色になってきた。油から上げ、紙を敷いた皿に盛り付ける。
『お待たせしましたっ!』
ひと通りの注文が片付き、落ち着いた雰囲気になる。
『リン、何かイイの入った?』
この店は、サッカーやバスケ、野球などをお客様のリクエストに合わせて上映している。いわゆるスポーツバーだ。三人のリクエストはいつも決まっている。
『この間のセリエA開幕戦はどうですか?』
必ずサッカーだ。事実、この間開催されたユーロ2004なんか、6時間ブッ通しで観ていたくらいだ。
『先週放送されたヤツか?見逃してるんだよなぁ。それでイイか。』
山積みになったDVDの中から、目当てのソフトを探す。最近は量も増え、整理するのも大変だ。やっとの思いで見付け、プレイヤーに入れる。
『じゃ、ただ今からローマvsフィオレンティーナの試合を流しますっ!』
画面に集中する三人。こうなると、前半が終わるまでは比較的静かだ。
『おいおいっ!あれで一発レッドかぁ!?』
『チャンス潰しまくりやなぁ…』
『やっぱ、中田欠場が響いてるんだろう…』
ひとつひとつのプレイを観ながら、的確な発言が出る。
常連さん達は知識が豊富だ。私も勉強になるが、時々ついて行けない事もある。前半終了のホイッスルが鳴る。ここからが三人の独壇場だ。
『数の上じゃ、互角やけど…』
『決定的なゴール前、何回あった!?』
『やっぱ、格の違いが色濃く出てるなぁ…』
ああでもない、こうでもない。そんな感じの会話が続く。
…カランカランッ!
ドアが開く。お客様だ。
『いらっしゃいませっ!』
多分、カップルであろう二人連れ。テーブル席に案内し、コースターとおしぼり配りオーダーを取る。
店内はそんなに広くない。カウンターに6席、4人で座れるテーブルが4セットあるだけだ。
『かしこまりました。少々お待ち下さいっ!』
カウンターに戻ると、空のジョッキと空き缶がふたつ、それに満タンになった灰皿が置いてあった。三人に目をやると、すでに新しい缶ビールの口が開いていた。
『すいませんっ!おっしゃってくれればイイのに…』
『構へんよ。先にあっちの方、処理せぇ。』
ナオさんからの返答。仕方がないので、テーブルのお客様のカクテルを作る事にした。
シェイカーに砕いた氷とホワイトラム、絞ったライムとガムシロップを入れてシェイクする。
…カシャッカシャッカシャッ…
規則正しい音が店内に響く。シェイカーからグラスに注ぎ、スライスしたライムをあしらう。ダイキリの完成。
注文された生ビールと一緒に運ぶ。
『お待たせしましたっ!』
静かにグラスを並べる。
『あの…』
『はいっ、ご注文でしょうか?』
『いや、観たいのがあるんですが…この間ののPRIDEのPPV、ありますか?』
最近の格闘技ブームで、この手のお客様が増えてきた。実際、大会が生放送された当日など、衛生放送未加入かと思われる人達の予約で、すぐに満席になった。
『実は今、カウンターのお客様からのリクエストを放映中なんです。申し訳ありませんが…』
『エエよ、変えても。』
脇からナオさんの声。
『でも…』
『俺達も構わないよ。内容が観たかったワケだし、結果は知ってるんだから。』
何度もこんな事があった。他のお客様のリクエストが出れば、必ず譲ってくれる。
『いつもすいません。ホントにイイんですか?』
『俺等の気ィ変わらんウチに流したれ。』
《皆さん…》
口には出さない。しかしいつも感謝している。
早速、リクエストされたDVDを再生する。テーブルのお客様は満足気に観戦中。
『リン、チェック。』
明人さんが、残りのビールを空けながら言う。それを合図に、みんなで席を立つ。
『俺、払うわ。』
ナオさんが財布を開く。このグループは金額の大小に関係なく、ローテーションで支払っている。単純に、ワリカンの計算が面倒って事でそうしてるらしい。
…カランカランッ!
『じゃあな、リン。また来るからなっ!』
『ありがとうございましたっ!今日はホントにすみません…』
『今日も、やろ。』
確かに。毎回言ってる気がする…


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