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ROB
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ROB-12

 間近で見るこいつの顔は,意外と整っていた。驚いた。いつもヘラヘラ笑っているから,ちゃんと見たことがなかったのだ。そのことを,今になって知るとは。
 固まっている俺の手に,ヤマダは,くだんの蝶のナイフと彼愛用のライフルを握らせた。もう必要ないから。そう言っているように思えた。
「お前には,ナイフを使って欲しくないんだよ。これから。」
 そう言って,ヤマダはドアを閉めようとした。
 ヤマダがいなくなる。
 俺の前からまた,必要な人が去ってしまう。
どうして……俺ばっかり。
 ねえ誰か,俺と一緒に居てくれる人はいないのか。
 誰か一人でも,俺を存在させてくれる人はいないのか。
 俺は立ち上がっていた。
 止めどなく流れる涙。
 無意識だった。既に遠く思えるその背に,ヤマダの背にしがみついていた。
 彼の温もりが伝わってくる。
 嗚咽が,漏れる。
「いかないで……,頼むから,いい子にするから,ちゃんと……,」
 俺はそう言ってヤマダの背に顔を埋めた。
 かなりきつくしがみついていた。
 行って欲しくない,もう置き去りにはされたくない。
 俺だけいつも,独り。
 突然。しがみついている俺の手を掴むヤマダ。その手は受け入れではない,拒絶であった。
「放せ,」
 ヤマダは冷たく言う。振り返りもしない。
「嫌だ。なんで俺ばかり……。」
 幼い子供のように,しがみつく。
 そんな俺にヤマダがため息をひとつ吐き捨てる。
 やはり俺は,人を困らせてばかり居るんだろうか。存在自体が,迷惑なのだろうか。
 イラナイ人間?
「俺はさ,」
 二度目のため息を吐き捨ててから,ゆっくりと,しかししっかりとした声でヤマダが言った。その声は,いつもの彼のもより少し脆くて,少し柔らかい。そんな声だった。


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