THANK YOU!!-3
秋乃の視線を逃れた瑞稀の顔を千晴が覗き込んだ。
その表情は、めったに見せない小悪魔と化していた。
「秋乃ちゃんから少ーし聴いたけど、鈴乃くんが朝までついててくれたんだって?」
「うっ・・!」
「寝ちゃったんだろ?」
千晴の言葉に何も言えなくなっていると、秋乃が更に追い打ちをかけてきた。
二人の顔は凄く緩んでいる・・というより、ニヤついている。
「(・・・あー・・。どうしよう・・)」
確かに、秋乃の言うとおりだった。
あの大泣きした後、瑞稀は泣き疲れと拓斗の体温で眠気を誘われ、そのまま眠ってしまったのだ。
勿論、拓斗はヤバイくらい焦った。(瑞稀は知らないが)
そして、やっとの思いで、瑞稀をベッドへ寝かせて拓斗自身も最初こそは瑞稀の寝顔を眺めていたのだが、そのまま眠ってしまった。
結局、瑞稀の家族が次の日見舞いで訪れた時に見つけて慌てて起こして帰したそうだ。
その話を聞かされた瑞稀はちょっと(かなり)罪悪感を感じたが、
「まあ、あの子もお前の傍にいたかったんだろ?ずっと手握って離さなかったし」
という叔父の言葉で顔がぶわわわっと真っ赤になったのでそれどころじゃなくなった。
もちろん、こんなことをいくら親友で後押ししてくれた秋乃に言えるわけがなく・・。
「だ、だから・・何もないって・・」
「へー、じゃあ何で瑞稀は顔赤いの?」
「ふぇ!?」
自覚すると、自分の両頬に熱が集まっていくのが分かる。
「な、なんでもないっ・・!」
「いやいや〜。瑞稀〜、嘘はダメっさよ〜」
「ち、千晴!お前、それ私の好きなキャラの口癖だろ!!」
「あっはっは〜」
「笑ってごまかすな!」
「瑞稀が言えるセリフじゃないでしょ」
自分の顔の熱など放ったらかし。
マンガとなると、瑞稀は優先順位を変えて千晴に突っかかる。
だが、その為に使ったセリフは秋乃の言うとおり、瑞稀が言えるセリフではなかった。
その時。
「・・八神」
後ろから声がした。