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和合観音
【ファンタジー 官能小説】

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サリーチェス姫-2

俺は床屋をやっていた仲間に頼んで、ナエボロスの髪を男前に切りそろえてもらうようにした。ナエボロスの奴は髪を切ってもらうのにもびくついていて、俺が切っている間、落ち着かせるために話しかけ続けてやっと終わらせたほどだった。
無理もない。時々奴は破けた肛門から血を出して痛がっていることがある。傷が完全に治っていないんだ。それに奴は折角男前に髪を切ったのに髪を洗わない。それどころか顔も洗わないし、水浴もしない。汚いし、おまけに臭い。
だがナエボロスは泣きながら言うんだ。身奇麗にしてると目をつけられる。これだけ汚くて臭ければ、自分をオモチャにしようとは思わないだろうって。
俺は弟のことを思い出して涙が出て来たよ。俺は弟が死んだ後、弟をオモチャにした奴を一人ずつ捜して刀の錆にしてやった。首を全部切って弟の墓の前に並べてやったよ。それで弟が浮かばれるとは思ってないが、ナエボロスのことは守ってやりたいと思ってるんだ。
ナエボロスは俺のことは信頼して頼ってくれるが、それでも体には触ろうとしない。肩を組んだりするのはもちろん握手も駄目。だが、俺は奴に刀の使い方を教えてやった。それと喧嘩の仕方もだ。だが刀の使い方はともかく喧嘩のしかたは教えるのに苦労した。
なにせ体に触っちゃいけないんだから、人間と同じ大きさのぼろ人形を作ってそれを使って教えた。ナエボロスはまだ体ができていない少年兵だから肘や足を使った防御術から教えてやった。頭突きとか噛み付きとか指を相手の目に入れるとか、鼻の穴に指を突っ込むとか耳を引きちぎるとか足の指を踏み砕くとか……、力がないこいつでもできる防御術を教えた。
特に特訓したのはどんな体勢からでも百発百中相手の急所を蹴り上げる訓練だ。人形で練習した後、俺は自分の急所に木の皿を当てて、動いている俺の急所を蹴る練習をさせた。
あるときちょっと俺が目を離しているときに、ナエボロスがトラブルに巻き込まれていた。例の5人のうちの途中で棄権した根性なしがナエボロスにちょっかいを出して来たんだ。おれが駆けつけたときは相手の男は急所を蹴られて地べたを転げまわっていた。俺は痛みを和らげてやるために頭を踏んづけて気絶させてやった。
そのときは珍しくナエボロスの奴め俺とハイタッチしたんだ。
パールを組んでいる同士は同じ小テントで寝ることになっているが、俺はテントの入り口で寝て、奴を一番奥で寝かせて離れることにしている。
なんせ奴は臭いから枕を並べて寝ることは無理なんだ。入り口は少しだけ開けてそこから顔を出して寝てるんだ。

サルテーム城を攻め滅ぼした後、おれ達の隊はしばらく戦いがなかった。だが本隊から命令が来て、サルテーム城から逃げ出したサリーチェス王女の行方を追って生け捕りにするように言われた。
城は俺たちが包囲していたから蟻の子一匹抜け出ることはできなかった筈だが、秘密の抜け穴があったらしい。
城に残った敵方の死体を残らず調べたがそれに該当するような死体は見つからなかったからだ。ということは取り逃がした俺たちの隊の責任ということになるらしいのだ。
おれ達の隊は少しだけ戻ってもう一度城の中を捜した。
ナエボロスはサルテーム城に先に押し入って生き残ったたった一人の兵士だから、こいつの情報はきっと役立つとは思っていた。

案の定ナエボロスが地下室への入り口を見つけた。なにやら王女らしい女がそっちの方に逃げて行くのを見たというのだ。地下室を皆で捜していると壁の石が一つだけ動くのがあってそこから抜け穴を見つけた。抜け穴を辿って行くと、王女のものらしい服が脱ぎ捨ててあって、出口を出ると城の包囲網のちょっと外側の水車小屋の床に出た。
きっとそこから百姓女にでも化けて逃げ出したのだろうと言うことになった。俺達は王女の服らしいものを本隊に届けた。
その後、俺達は1ポスィート単位(20人くらい)で王女の足跡を追った。だが地に潜ったか天に昇ったか全く足取りはつかめなかった。
そのうち戦争は終わった。敵の王も捕らえられ殺されたのだ。王女だけは足取りが掴めなかったが、敵の王が死んだ今となっては取引材料としての利用価値もなくなり捜索は打ち切られた。俺達はそれぞれの故郷に帰った。

 


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