志津子 -1
【志津子 #9 眠り秘め】
いつの間にか年末も近く、遊び場所のない田舎町はその家その家で忘年会代わりの飲み会をあちこちで毎晩みたいに開いていた。
例に漏れず我が家でも忘年会にかこつけて、なんつっちゃぁ飲み会をひらき友人を家に飲んでは騒いでいた。
酒飲みはいきおい家に泊まり朝方帰っていくことが多くなり、家では3日と空けずに誰かが泊まっては帰っていった。
その日も、例の高校の先輩であるミキオがマッコリを貰ったと言ってつまみ持参で家に来た。
近所の先客が2人来ていてもう出来上がっていて帰る間際だった。
しかしミキオのマッコリをも見るとまた腰を据えて改めて酒盛りが始まった。
そうこうしているうちに、すっかり出来上り過ぎた先客2人はよろよろふらつきながら上気分で帰っていった。
「ゆっくりしていっていいからね」
志津子はミキオにそういうと、空いた食器をかたづけ寝支度をすると寝室へ先に入っていった。
ミキオがくるのは久しぶりだった。
ちびちび飲みながら互いの共通の友人の話題やらをしていたが、ふと思い出した様に車に行ってくると言うと出て行った。
帰って来たミキオが紙袋を取り出すと中身を取り出した、20錠セットになっている何かの錠剤をみせた。
「何これ?危ない奴じゃないだろうなぁ?」
俺が怪訝そうにそういうと。
「睡眠導入剤さ、俺これを試してみたいんだよ。どんなに効くもんなんだかさ…なんか面白くね?お前にも少しわけてやるよ」
俺にそう言ってその袋から5錠切り取ってテーブルにおいた。
ある日、志津子とミキオの話になった
「いつ結婚するんだろうね、いい人なのにさ。この間連れてきた彼女とは結婚しないのかな?」
「どうだろな‥あれはちょっとないだろ。売れないキャバ嬢みたいな女だったじゃん」
「お前みたいな嫁さん探してるって言ってた。どうよ今度はミキオちゃんって」
俺は冗談半分で話を向けた。
「やだよっ。近くの人ばっかだと後々が変なことになったら大変だもん、トシちゃんだけでもなんかヒヤヒヤなのにさ」
志津子はそういうと笑いながらビールを取ってくると自分のコップについで半分くらい飲み干した。
このところトシカズやサトシとも何も無いままにずっと来ていた。
この間会ったときミキオならいいかなともチラッと考えたりもしていたのは確か。
志津子が言うように確かにこの小さい町でこういうことを繰り返していたら、万が一ということもあるし。
その後の事も考えたら面倒くさい事になるのは目に見えている。
「お前が知らない間に抱かれるって言うのは?後にも先にも一度だけっていうやつ」
「何それ?そんなの出来るわけ無いじゃん」
そう言いながらも志津子の目が悪戯っぽく輝く。
「出来る方法があるさ、その一部始終を録画してさお前にはそれを後で見せてやるからさ」
そして思いついた計画を志津子に話した、聞いていた志津子の目が淫らに光っていた。