THANK YOU!!-6
5月2日・・・。
GW直前のこの日。
待ちに待った最初の大行事、運動会が始まった。
瑞稀たちのクラスは紅組に分けられ、応援に徹していた。
開会式では、高学年の鼓笛隊の演奏で生徒全員が入場した。
運動会午前のプログラムは、クラス対抗競技。
紅組、白組の得点にも関係してくる。
一年生の100m走や、二年生の玉入れ合戦、三年生の大縄。
四年生による、ソーラン節も行われた。
そして、演技力を競う毎年恒例の高学年による組体操。
ここまでが、午前のプログラム。
そして、中間結果は、紅組が少しリードをしているが、すぐにでも白組が追いつけそうという接戦だった。
昼休みの時間になり、各自それぞれの場所でお弁当を広げていた。
瑞稀もその一人であり、幼馴染みの千晴と桜の木の下で疲れを癒していた。
この桜の木は、この小学校のシンボルと言ってもいい。
ほかの桜よりも大きく、樹齢も高い。
そして、瑞稀がいつも教室から見ていた桜。
「にしても、瑞稀は審判よくやるね〜」
「そう?結構楽しいよ?」
卵焼きを頬張りながら隣に居る幼馴染みに感服の言葉を告げる千晴。
その言葉を聞いた瑞稀はミニトマトを手に取り、それを自分に照りつける太陽と重ねてみる。
そのトマトから視線を逸らさずに言葉を返す。
「それに、やりがいあるよ。笛吹いたりとか」
瑞稀が審判の仕事で担当しているのは、スターターと合図確認等で笛を吹く事だった。
バタバタする必要が無いので思ったよりも疲れていない。
「さすが瑞稀。トランペットが役に立ったねぇ〜」
「いやいや、トランペットと笛違うよ?」
審判を楽しんでるを感じれた千晴は、安心をした。
だからか、ボケてみせる。
瑞稀は笑いながらツッコミを入れる。
「八神。ちょっといいか?」
そう声をかけられて、ミニトマトを太陽から開放して声のした方に目を向けると。
太陽の前に立っているため、逆光を浴びてしまっている誰か、だった。
瑞稀は、目を閉じてもう一度目を開けると、顔が認識出来た。
それと同時に、自分を見つめている優しげな顔に出会った。
「・・・」
その顔に見とれてしまい、言葉を返そうとした口が空いたままになってしまった。
隣に居る幼馴染みの変化に気づいた千晴は、そっと瑞稀を呼んだ人物を見上げた。
その人物は、瑞稀が何も言わない事にどうしていいか分からず戸惑っているようだ。
仕方ない。
と、思った千晴は瑞稀の腕を叩いた。
肩を叩かれるのは嫌いな幼馴染みを一応気遣った。
その痛みに我を取り戻した瑞稀は一度口を閉じてから改めて口を開けた。
「鈴乃、どうしたの?」
そう、瑞稀を呼んだ人物は他ならぬ拓斗だった。
その言葉に安心したのか、拓斗は瑞稀の目の前に立った。
「あぁ。その・・」
先ほどの優しげな顔と一転。
バツが悪そうな・・でも、顔を赤くさせ、言いづらそうな顔。
声も、凄く小さくなりモゴモゴしている。